研究期間全体を通して、以下の課題を解決することができた。
①これまで作製されたことがない立方晶型準安定相Ge2Sb2Te5のバルク体を、メルトスピニング法という異分野の手法と、室温高圧プレスという申請者が独自に考案した手法を組み合わせることにより作製することに成功した。 ②上記①で述べた試料作製手法が、作製したバルク体の結晶構造や輸送特性に与える影響について明らかにした。その上で、第一原理計算により予測された輸送特性と、我々が作製した輸送特性の違いの原因を推察した。 ③Ge2Sb2Te5のSbサイトにBiを置換した試料の作製により、熱電特性の最適化を行った。その結果、Bi置換量の増加により、試料中に含まれる六方晶型安定相が増えていくという予想外の結果が得られた。また、Bi置換試料の輸送特性は、Biによる点欠陥散乱による電気伝導率及び熱伝導率の低下と、六方晶型安定相構造の増加によるゼーベック係数の低下により説明できることがわかった。 ④メルトスピニング法により得られたGe2Sb2Te5粉末を、中圧で短時間焼結することにより、立方晶型準安定相Ge2Sb2Te5の作製を狙った。様々な作製条件を試したが、緻密な焼結体を得ようとすると、六方晶型安定相に相転移してしまうことがわかった。しかしながら、通常の作製手法による六方晶構造よりは、欠陥を含んだ構造であり、その構造により輸送特性が大きな影響を受けているという事が示唆される結果を得た。
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