研究課題/領域番号 |
16K14426
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
小澤 俊平 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (80404937)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 無容器凝固 / マルチフェロイックマテリアル / ガスジェット浮遊 / 過冷却 |
研究実績の概要 |
強磁性と強誘電性を有するマルチフェロイックマテリアルには,新しい記録媒体としての可能性が期待されている.その対象として,六方晶のRMnO3(h-RMnO3, R:希土類元素)が有力視されているが,磁気変態点が~100K と低く,加えて反強磁性であることが実用化への妨げになっている.一つの解決法として,強磁性相と強誘電性相のナノスケールでの複合化が挙げられるが,未だその手法は確立されていない.この点に関連して、近年RFeO3融体を過冷凝固させると,同様の六方晶(h-RFeO3)が準安定相として生成されること,また同試料の粒界には強磁性相のFe3O4との共晶が存在することが報告されている.これらの結果を踏まえ,本研究では,強誘電性を有する準安定六方晶(h-RFeO3)と,強磁性を有するFe3O4相との微細共晶組織を得ることで,マルチフェロイックコンポジットの創成を最終目的としている. 本年度は,この目的の達成に必要なRFeO3-Fe3O4系準安定状態図を作成するために,まず最初に,現有のガスジェット浮遊装置に,ファイバーカップリング半導体レーザーを導入し,結晶成長過程の観察や温度履歴測定の自由度を向上させた.これにより,観察方向を任意に選択し,かつ,複数のカメラや放射温度計での観察が可能となった. 次にこの装置を用いて,酸素分圧を1atmとした場合のLuFeO3-Fe3O4 系について,温度と,LuFeO3/Fe3O4 のモル比をパラメータとして過冷凝固実験を行い,状態図について検討した.その結果,0.6LuFeO3-0.4Fe3O4での融点が最も低くなり,この付近が共晶点であることが分かった.またその試料が共晶のような組織を示す事が分かった.さらに,Fe3O4のモル分率の増加は,h-LuFeO3を減らすだけで無く,未知の相を生成させる事が分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的としているマルチフェロイックコンポジット創成では,過冷凝固挙動の観察が必須である.今年度は当初計画通り,それを行うための装置について構築できた.また,今年度のもう一つの目的として,h-LuFeO3-Fe3O4系準安定図の作成を計画していたが,これが十分に達成された. ただし,当初想定していなかった未知相の生成が確認されたことから,進捗状況としては,おおむね順調とした.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では,当初の計画通り,h-LuFeO3とFe3O4の共晶組織を得ることに成功した.しかしながら,Fe3O4のモル分率を大きくした場合,h-LuFeO3相の生成量が減るだけでなく,当初予想していなかった未知の相が生成した.したがって,本研究で目的としているマルチフェロイックコンポジットを創成するためには,準安定h-LuFeO3相の生成能を向上させる必要がある.そこで,目的とする六方晶が安定相として生成するLuMnO3系に着目し,Feの一部をMn置換することを検討する.またこの安定化は,希土類元素の原子半径を小さくすることでも達成できると考えられることから,Luの一部をそれよりも原子半径が小さいScで置換することなどを試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではFeを多く含む酸化物を試料として,マルチフェロイックコンポジットの創成を目的としている.この目的のためには,得られた試料の相同定,構造解析が必要であるが,本学に設置されているX線回折装置はCuKαをX線源としていることから,蛍光X線の発生によるバックグラウンドが大きく,それを十分に行うことが出来ない事が明らかとなった.そこで,Co管球を用いたX線回折装置の整備を検討したが,それを年度内に終えるには,時間が不足する事が分かったことから,これを次年度当初の計画としたいと考えたため.
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次年度使用額の使用計画 |
CoKα線を用いた粉末X線回折を行うために,管球などの購入や管球変更後の校正などの装置調整に使用する.
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