平成30年度は、2段階再凝集プロセス法により異種ナノシートの複合化を行った。この方法では、ナノシートの再凝集を起こすのに必要なプロトン濃度の閾値が酸化チタンナノシートと硫化モリブデンナノシートとで異なる点に着目し、厚みが10-15ナノメートルの酸化チタンナノシート再積層体に厚み1ナノメートル以下のモノレイヤーの硫化モリブデンナノシートが吸着した複合材料を作製することができた。硫化モリブデンナノシートは水素生成反応の活性サイトを豊富に持ち、また酸化チタンの電子アクセプターとして働くため、酸化チタン光触媒の効率的な助触媒として機能することが期待できる。作製した複合材料は実際に、単独の酸化チタンナノシート再積層体や硫化モリブデンナノシートを吸着させた酸化チタンナノ粒子よりも高い水素生成光触媒活性を持つことがわかった。 当該研究課題ではこれまでに、還元型酸化グラフェンとのヘテロ接合により酸化チタンナノシート上で光生成する電子・正孔対を空間的に分離することにより再結合を抑制し、光誘起親水化活性を向上できることを見出した。また、酸化マンガンナノシートと還元型酸化グラフェンを原子層レベルで交互にヘテロ積層した複合材料を開発し、電極抵抗の低減やレドックスサイクルの安定化により蓄電デバイスの高容量化と長寿命化を達成できた。 このように、研究期間全体を通した成果として、異なる種類の二次元ナノシートを階層的に集積させた構造を構築することでその界面におけるナノシート間の効率的な電荷移動に基づくさまざまな特性の向上を達成できた。
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