燃料電池などの電気を取り出すクリーンエネルギーデバイスでは、電極表面と電解質からなる異相界面が存在する。高効率かつ高耐久な電極材料の開発には、正確に表面構造を解析し、かつ高度に制御することが極めて重要である。そのためには、電極反応中の原子・分子の高速な動きを観察することが必要不可欠である。そこで、本研究室で開発した高速プローブ顕微鏡を使い、固体高分子形燃料電池における電極表面変化を原子分子レベル・ミリ秒単位で観察し、高活性・高耐久な触媒開発を目指した。 前年度は、プローブ顕微鏡が燃料電池雰囲気下で測定できるよう、環境制御装置の開発に主眼を置き、水素および酸素雰囲気下で電極反応が観察できるようにした。その装置を使い、平成29年度は、まず模擬実験として銅の析出・溶解過程を水溶液中で観察し、装置の安定性を検証した。その後、白金電極表面に薄い酸性溶液の液膜(メニスカス)を形成させ、酸素ガスおよび水素ガスの酸化還元反応をその場観察した。ガス雰囲気を変えることで、電極表面とその構造変化がリアルタイムで観察できた。また観察した変化を定量化するために、白金メッキの水晶振動子を用いたクォーツクリスタルマイクロバランス(QCM)装置を用いて、構造変化と微細構造との関係を調べた。そこでは、構造変化にともないはじき出された金属クラスターが電極表面上に吸着・脱着を繰り返している様子が、重量変化から分かった。 今後は、今回得られた成果結果をもとに、原子分子レベルでの理想とする表面構造を有する触媒材料を創製し、燃料電池のさらなる高性能化へ発展させる。
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