研究課題/領域番号 |
16K14431
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉本 諭 東北大学, 工学研究科, 教授 (10171175)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ナノコンポジット / ナノ粒子 / 水素プラズマ金属反応法 / アークプラズマ蒸着法 / ハード磁性 / ソフト磁性 / 保磁力 |
研究実績の概要 |
【目的】本研究では、水素プラズマ金属反応法(HPMR)によって数十nmのソフト磁性ナノ粒子を作製し、その上にアークプラズマ蒸着法(APD)によって数nmのハード磁性ナノ粒子を担持させたコアシェル構造を有するナノ磁石粉末の作製方法の構築を目的としている。平成28年度はHPMRで磁化の高いソフト磁性を示すFe系合金ナノ粒子を作製条件を確立することができたので,平成29年度はハード磁性粒子としてMnBiを選び、まずはその結晶化条件を確立するためにAPDにてMn-Bi系薄膜を作製し、熱処理に伴う結晶構造と磁気特性の変化を調べた。 【実験方法】基板には熱酸化膜付きSi基板を用い、APDのターゲットにはMn50Bi50合金を用いた。APD条件は放電電圧200V、ガス流量をAr、He各20sccm、放電周波数1Hzで行い、最後に酸化防止膜としてTaキャップ層をつけた。得られた薄膜を赤外線イメージ炉で250-400℃30分熱処理した。磁気特性の測定にはVSM、相の同定にはXRDを用いた。 【結果】得られた結果をまとめると以下のようになる。1.as.depo試料では直線状のヒステレシス曲線となり、保磁力は発現しなかった。2.その曲線の傾きから試料が反磁性を示していることがわかった。3.XRDよりas.depo試料はBi相から構成され、ハード磁性相であるMnBi相は出現していなかった。4.300℃以上の熱処理により、ヒステレシスループは開き、保磁力が発現した。5.350℃の熱処理によって、最も高い保磁力1165 kAm-1が得られた。6.XRDより、300℃以上の熱処理によって、MnBi相の結晶化が可能であることがわかった。7.以上より、APDによりシェル層となるMnBiハード相粒子の作製が可能であることが判明した。8.HPMRで作製したFe粒子にMn-Bi薄膜をAPDで蒸着させる実験を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の成果において、作製したMn-Bi系薄膜において、300℃以上の熱処理においてMnBiハード磁性相が出現し、350℃の熱処理によって1165 kAm-1 なる高い保磁力が得られたことから、ハード磁性相がAPDによって得られることが判明した。さらにこれを受けて、次年度開始予定であった平成28年度に確立したHPMR法で作製したFe粉末上にAPDにてMn-Bi系薄膜を蒸着してナノコンポジット化を検討していく実験も開始した。これは研究が順調に進展し、当初の年次計画以上の進展をみせていると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
【研究方針】H28年度、H29年度の成果を受け、H29年度中に予備実験を開始した水素プラズマ金属反応法(HPMR)でコア粒子となるFe粒子を作製し、アークプラズマ蒸着法(APD)でMnBi相をシェル層として形成させ、Fe/MnBiナノコンポジット粉末を作製する研究を進める。さらに熱処理にて磁気特性を調べる。ここで良好な結果が得られれば、放電プラズマ焼結法(SPS)などを用いてバルク化を試みる。 【実験方法】(1)前年度までの作製条件を用いHPMRでシェル層となる数十nmのFe系ナノ粒子を作製する。(2)APDの粉末容器に(1)のFe系ナノ粉末を入れ、攪拌しながら電圧ならびにショット数を制御してシェル層となる数nmのMn-Bi系ナノ粒子を蒸着かつ担持させ、コアシェル構造化したFe/Mn-Biナノコンポジット粉末を作製する。(3)得られた粉末をAr中、400~500℃で熱処理し、Mn-Bi系薄膜中にMnBiナノ粒子を結晶化させてFe/MnBiナノコンポジット粉末を作製する。(4)得られたナノコンポジット粉末における出現相をXRDにて同定し、組織をSEM、TEMにて観察する。また、磁気特性をVSMで測定する。(5)得られた粒子を磁場中成形し、さらに熱処理によりバルク状のサンプルとし、磁気特性を測定する。(6)以上の結果を基に、ナノコンポジット粒子における組織と磁気特性の関係ならびにその作製条件との関係を明確化する。
|