研究課題/領域番号 |
16K14432
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川崎 亮 東北大学, 工学研究科, 教授 (50177664)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 粉末冶金 / 金属ガラス / 過冷却液体 |
研究実績の概要 |
<平成28年度>は、単分散Fe系金属ガラス単相粒子を作製し、その熱的安定性・粘性係数を正確に評価し、粘弾性応力解析を行いマイクロギア金型の設計指針を得た。また、過冷却液体温度範囲で結晶化潜伏期間以内に粘性流動加工できる装置を構築した。 (1)Fe系金属ガラス単分散粒子の作製とその評価Fe系金属ガラス合金の候補材として、Fe-Co系合金([(Fe0.5Co0.5)0.75Si0.05B0.2]96Nb4)を用い、パルス圧力付加オリフィス噴射法により、直径500μmの単分散Fe系金属ガラス粒子を作製した。XRD解析、TEM観察により均一・均質で構造欠陥が無く、Fe系金属ガラス単相であることを示し、優れた高品質Fe系金属ガラス単相素材であることを明らかにした。DSC分析からガラス転移温度(T8)、結晶化温度(Tx)を測定し、過冷却液体温度範囲を正確に評価した。また、等温DSC分析により結晶化までの潜伏期間を正確に評価した。 (2)粘弾性応力解析とマイクロギア金型の設計指針 有限要素法により、マイクロギア金型への単分散Fe系金属ガラス単相粒子の粘性流動充填過程をシミュレーション解析を試みた。この際、過冷却液体温度範囲のある温度を想定し、その温度における粘性係数、結晶化までの潜伏時間を考慮して解析する。変形速度が速くなる事が予想され、したがって、粘性流動応力が高くなり、パンチおよびマイクロギア金型内部応力がどの程度まで上昇するのか明らかにした。その結果から、金型材料の選定、形状と肉厚、クリアランスなどマイクロ金型の設計指針を示し。外直径0.9㎜、寸法精度1μmの高精度金型の試作を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、金属ガラス単相で品質再現が非常に高い単分散Fe系金属ガラス球形粒子を素材として用い、その1粒子を過冷却液体温度領域で、マイクロ粘性流動加工することによって1つの精密微小部品とする、Fe系金属ガラス単相微小部品の高効率成形加工法を研究・開発するものである。ポリマーや従来の金属材料では達成できない高強度、高硬度、耐摩耗性、耐食性を同時に満たし、精密微小部品(寸法0.9mm以下、寸法精度1μm)として情報・医療用などの機械運動を伴う精密機器の小型化・軽量化・高機能化に資することを目的としており、単分散Fe系金属ガラス単相粒子を作製し、その熱的安定性・粘性係数を正確に評価し、粘弾性応力解析を行いマイクロギア金型の設計指針を得たこと、過冷却液体温度範囲で結晶化潜伏期間以内に粘性流動加工できる装置を構築できた事が主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
改良構築したマイクロホットプレス装置に高精度マイクロ金型を設置し、単分散Fe系金属ガラス粒子を1粒充填して、マイクロ粘性流動加工を行い、1個のマイクロギアの作製を試みる。過冷却液体温度で結晶化、潜伏時間以内に粘性流動加工できることを示す。XRD、TEMを用い、作製したマイクロギアの内部組織、構造を調査し、構造欠陥が無く、Fe系金属ガラス単相状態が維持されている事を確認する。また、ビーカース硬さ試験も実施し、素材の材料特性、機械的性質が保たれている事を明らかにする。これらの結果から、本プロセスが、Fe系金属ガラス単相のマイクロギアの成形加工プロセスとして、極めて有効である事を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
比較試験として考えていたPd系金属ガラス材料の製造および納期が遅れたため
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次年度使用額の使用計画 |
計画通り、材料を購入し、遅滞なく実験を進める予定である
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