電子回路における配線は、気相析出膜が主に用いられているが、基板損傷を防ぐ目的で低温での析出が行われる。しかしこの場合、金属薄膜は結晶粒径が小さく、導電率に劣ることになる。このためポストアニーリング処理が行われているが、本研究はマイクロ波による選択加熱を利用した迅速なアニール処理、およびその際における静磁場印加を行い、粒構造の制御を試みた。実験研究においては、Au薄膜を、スパッター法でマイクロ波吸収が無視できる石英(SiO2)基板に室温で膜厚数10~100nm析出させた後、5.8GHzシングルモードアプリケータ(現存装置)によりポストアニールを行なった。この際に、現存の電磁石を利用して、磁場印加を行なった。AFM(原子力間顕微鏡)により得られた薄膜の組織観察や、膜表面の平坦性についてテジタルデータを得て、これをフーリエ解析し、凹凸の周期(波数)の変化について解析を行なった。この結果、マイクロ波加熱と電気炉加熱を比較した場合、前者の方が高波数域での平坦化が促進していると共に、低波数域では,結晶粒成長が促進するため、ミクロンスケールの凹凸が形成され易くなる事が分かった。これは、見かけ上表面拡散係数が増加した事に相当すると考えられる。更に、Mullins-Herringモデルを基にした、薄膜表面の平坦性変化に関する数値シミュレーションを行い、実験結果について定量的な議論を行うことができた。本研究により外部から静磁場を印加し、マイクロ波加熱処理を行なうことにより、結晶粒成長を抑制する事でき、平坦性が向上する傾向がある事が分かった。
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