研究課題/領域番号 |
16K14434
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 優 東北大学, 工学研究科, 助教 (40599057)
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研究分担者 |
武藤 泉 東北大学, 工学研究科, 教授 (20400278)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 窒化処理 / 水素侵入 / プラズマ窒化 / 水素脆化 |
研究実績の概要 |
省資源・省エネルギーの観点から、高張力鋼に代表される高強度構造材料の使用拡大が検討されており、水素脆化の抑制が求められている。そこで、水素と同じ侵入型元素である窒素をあらかじめ固溶されることで、水素侵入耐性に優れた鋼材表面を構築する研究を行った。今年度は、プラズマ窒化処理により、鋼材表面に生成する窒化層の組織制御を行い、その窒化層組織が水素侵入特性に与える影響を解析することに取り組んだ。 プラズマ窒化処理における、窒素・水素のガス比率や試験片の温度、処理時間を制御することにより、純鉄表面に窒化物層(γ'相やε相)を形成することができた。特に、窒素・水素のガス比率は窒化層の組織制御に大きな役割を果たし、組成や窒化層厚さを制御することに成功した。電気化学水素透過セル(Devanathan-Stachurskiセル)を用いて、酸性溶液中およびホウ酸緩衝溶液中における窒化物層を有する純鉄の水素侵入特性を評価し、表面に窒化物層を形成することで、水素検出側で計測される水素透過電流が大幅に減少することが分かった。この水素透過電流の解析から、窒化層が水素侵入だけでなく鋼中の水素拡散に対しても有効な障壁となることが明らかとなった。特に、ε相を含む窒化層は高い水素侵入特性を有しており、膜厚も厚かったためその効果は長時間持続した。また、ホウ酸緩衝溶液中におけるカソード分極曲線の測定から、窒化物層は水素の発生反応自体も抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、プラズマ窒化処理によって窒化層の組織を制御すること、作製した窒化層の水素侵入挙動を電気化学水素透過法で評価することを実施した。窒化層が水素侵入耐性を発揮する結果が得られており、期待通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は順調に進展しており、当初の計画通りに進めることで目的は達成できると考えられる。 今後は、窒化処理を施した鋼材の実用性を検討するため、水素侵入特性の他に耐食性を評価するとともに、実際の水素侵入環境を模擬した乾湿繰り返し試験における水素侵入挙動を調査する。また、窒化物層だけでなく鋼に窒素が固溶した窒素固溶層に関しても、プラズマ窒化処理で作製し水素侵入挙動を評価したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備備品費として計上していたマルチポテンショスタットは、所属研究室で所有していたポテンショスタットを使用することができ、消耗品費として計上していた試料金属等も、所属研究室で残存していたものを使用することができたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
計上している消耗品の購入に加え、熱処理や電気化学測定で使用している消耗品が劣化してきたため、新たにその消耗品を追加購入する。また、国内・海外の成果発表旅費や論文の投稿料に充てる。
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