モデル合金としてCrおよびAl濃度の異なるFe-Cr-Alおよびそれに活性元素であるZrをFe-Cr-Al-Zr合金上に形成するアルミナスケールの組織に及ぼす母材中の合金元素の影響を調査し、合金元素がアルミナスケールの組織形成機構、長時間の高温酸化中における組織の変化に与える影響を詳細に検討して、成長速度が遅く耐酸化性に優れるアルミナスケールの組織制御手法を検討した。 アルミナスケールの結晶粒径は、合金中のCr濃度を増加させることにより減少した。これは、酸化初期のCrリッチスケールの形成にともなって合金表面に脱Cr層が形成し、そこでのアルミニウムの外方拡散フラックスの増大により、合金表面におけるアルミナの過飽和度が増加して、アルミナの核生成頻度が増加するためであることが明らかになった。高Cr合金におけるアルミナの細粒化はアルミナスケールの成長速度を増加させることが分かった。 微量のZr添加はアルミナスケールの外方への成長を抑制することが知られているが、一方で、アルミナの組織を微細化し、アルミナスケールの内方への成長をむしろ増加させることが明らかになった。これは、Zr無添加合金では、アルミナの結晶粒は時間の経過に伴って拡散成長により粗大化するが、Zr添加合金では粗大化が著しく抑制されるためであることが分かった。 また、Zrはアルミナスケールを構成する結晶粒の粒界に偏析し、これがアルミニウムイオンの外方拡散を抑制することが知られているが、この結晶粒界におけるZrの偏析が粒成長を抑制するメカニズムを提案した。 得られた結果から、適切な組織を持つアルミナスケールの形成は、合金中組成を最適化することにより可能であることを示した。
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