研究課題/領域番号 |
16K14438
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平藤 哲司 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (70208833)
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研究分担者 |
三宅 正男 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (60361648)
池之上 卓己 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (00633538)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電析 / 非水電解液 / 非平衡相 / 多層薄膜 |
研究実績の概要 |
平衡相と非平衡相が周期的に積層する多層膜を、電析条件の周期的変化のみで作製することを目的としている。まず、非平衡相膜の電析条件の探索を行った。 磁性多層膜に応用可能な非平衡相である六方晶ニッケル (HCP-Ni) 膜を得るために、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド (EMIC)- 塩化ニッケル (NiCl2) 浴を用いた電析を検討し、各種の電析条件が Ni 電析膜の結晶構造におよぼす影響について調べた。空気雰囲気で、EMIC-NiCl2 電解浴を用いて Ni 電析を行った。低電流密度、高浴温などの、Ni の拡散律速とならない範囲内の条件で検討を行ったが、得られた膜は全て安定相である FCC-Ni からなるものであった。また、いずれの電析膜も、微粒子が疎に堆積した形状をしており、平滑な表面の膜は得られなかった。 アルゴン雰囲気で浴温 160°C、Ni 濃度 NiCl2-5.4 mol% の EMIC-NiCl2 電解浴を用いて 2 極間電圧 3.0 V で定電圧電析を行ったところ、チタン基板上に安定相の FCC-Ni と準安定相の HCP-Ni の二相からなる電析物が得られることがわかった。さらにカソード電位を -1500, -2000, -2500 mV vs. Ni Wire に制御して、定電位電析を行ったところ、すべての試料から HCP-Ni および FCC-Ni の XRD パターンが観察された。カソード電位がこの範囲のとき、HCP 構造、FCC 構造の2つの結晶構造を持つ Ni が混ざった電析膜が得られることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、平衡相と非平衡相が積層する多層膜の作製を目標としている。この目標達成のため、まず、非平衡相単相膜の電析条件を確立する必要がある。これまでの研究により、非平衡相が析出する条件を見出すことはできたが、得られた電析膜には、常に、平衡相も混在しており、非平衡相単相膜は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、電解液の組成を変化させ、電析を試み、非平衡相単相膜の電析条件を確立する。本研究では、多層膜の形成を目的とするため、単に非平衡相が析出するだけではなく、析出物が平滑であることが求められる。析出物の形態は、金属イオンの物質移動や析出物表面に吸着する添加剤に影響されるため、添加剤の効果についても検討する。 上記の研究の結果を踏まえ、非平衡相析出条件および平衡相析出条件を決定し、周期的に電析条件を変化させ、多層膜電析を試みる。この際、電析電位、電析条件の変更周期などを変化させ、それらの影響を効率的に評価する。積層構造の形成に成功した場合は、積層厚さを変化させること、非周期的積層構造の形成にもチャレンジし、新規材料の創出を目指す。 積層構造が確認できた電析物の磁気特性、電気特性、機械的特性を評価する。特に HCP-Ni/FCC-Ni 多層膜については、磁気抵抗効果を評価する。 得られた結果を総合的に判断し、非平衡相/平衡相金属多層膜の形成が可能な電析条件に関する知見を整理する。これにより、非水溶媒からの電析を利用する非平衡相/平衡相金属多層膜形成の可能性を評価し、新しい多層膜形成法を提案し、Ni 以外の金属への適用可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫により、当初計画より、若干の経費の節約ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は、次年度の消耗品購入に充てる。
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