研究課題/領域番号 |
16K14439
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
山本 洋揮 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員(定常) (00516958)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 材料・加工 / 半導体微細化 / ナノ加工 / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、精度1 nmの量産細線技術を実現するためナノ空間に自己組織化単分子膜の自己組織化パターンをうまく利用することで ナノ空間界面制御を高度に行えるようにメカニズムの解明およびナノ空間にビルディングブロックである化学修飾した金属ナノ粒子を 高度に位置制御することを目的としている。そのためには1 nm以下のラフネスを制御するためには、金属ナノ粒子のアグリゲーション過程を解明する必要がある。 本年度は、金属ナノ粒子のアグリゲーション過程の解明を試みた。具体的には、金属イオン前駆体を含んだ固体高分子膜(ポリスチレン(PS)やポリメタクリレート(PMMA))に電子線を照射することで、金属ナノクラスターを高分子中に生成し、その後、加熱することによって、金属ナノ粒子のアグリゲーション過程をSEMおよびAFMによって調べた。その結果、固体高分子膜中では溶液中とは異なり、加熱しないと金属ナノクラスターのアグリゲーションが抑制されて金属ナノ粒子が生成しないことが明らかになった。また、高温領域まで加熱しながらAFM測定を行い、薄膜中で金属同士がアグリゲーションする様子をin situで調べたが、ドリフトが観測され、ドリフトを最小限に抑えられる必要があることがわかった。 加えて、電子線リソグラフィやナノインプリント法およびブロック共重合体のテンプレートを使って微細パターンを形成し、 そのナノ空間領域に自己組織化単分子膜 (SAM 膜)を形成し、微細な SAM 膜パターン上 での金属ナノ粒子の配列制御を行った結果、金属ナノ粒子を配列制御することができることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精度1 nmの量産細線技術を実現するために、平成29年度は、金属ナノ粒子のアグリゲーション過程の解明を試みた結果、金属イオン前駆体を含んだ固体高分子膜(ポリスチレン(PS)やポリメタクリレート(PMMA))に電子線を照射するのみでは、金属ナノ粒子が生成されないことが明らかになった。しかしながら、電子線照射後にポリマー薄膜を加熱することによって固体高分子膜中でも金属ナノ粒子のアグリゲーション過程が引き起こることを見出した。ドリフトが原因で金属アグリゲーションのIn situ測定はAFM測定によって成功されていないが、加熱することをしないとポリマー中で金属ナノクラスターのアグリゲーションが抑制されてしまい、アグリゲーションには電子線照射後の加熱が必要不可欠であることが示唆されている。それゆえ、金属微細配線を作製するためには照射後の加熱が必要不可欠であることを明らかにした。このように、得られた結果から、精度1 nmの量産細線技術を実現するための新しい微細加工技術の創成に糸口を見つけることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
精度1 nmの量産細線技術を実現するための新しい微細加工技術を開発できたので、平成30年度は表面ラフネスの原因を解明することを目指す。具体的には、引き続き、原子間力顕微鏡によってIn situ測定でのアグリゲーション過程の解明を試みる。また、ラフネス形成へのSAM膜またはリガンドの構造および鎖長の影響および金属ナノ粒子のサイズの影響について調べる。解像度の計測はSTEM、AFMやSEMを使用し、パターン表面のナノオーダーのラフネス形成の解析には、SEM画像を解析ソフトを用いて行い、ラフネス形成メカニズムを解明することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入しようとした試薬が間に合わなかったため、次年度の使用額は試薬などの物品購入費にあてる。
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