研究課題/領域番号 |
16K14440
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
真鍋 健一 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (10145667)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロチューブハイドロフォーミング / 金型変形連成FEM解析 / 超高圧繰返し負荷 / 逐次成形 / 枝管張出し成形 / 成形限界 / 摩擦軽減 / 結晶粒径 |
研究実績の概要 |
本研究では微細な金属マイクロチューブの低いハイドロフォーム性を大幅に向上させる方法として、超高圧内圧負荷時の金型の型開き(弾性変形)を積極的に許容させ、素管とのマイクロトライボ特性の大幅な改善と材料流動促進を図り、マイクロハイドロフォーム性の向上と加工内圧を低減させる加工法開発を目指した。次の4つの項目について検討した。(1)金型変形連成FEM解析による十字(クロス)及びT成形用金型設計とプロセス開発:金型変形連成解析を行い、試行錯誤でマイクロ金型形状や拘束条件の最適モデリングを試みている。まだ適正条件を見い出すところまでには至っていない。 (2)マイクロチューブの引張試験による材料評価試験とハイドロ実験装置の製作:りん脱酸銅とSUS304のマイクロチューブの力学的特性と結晶粒径の測定を終えている。ハイドロ実験装置と新プロセスの構想設計中。 (3)剛体金型を用いたマイクロハイドロ基礎実験とFEM解析(従来剛体金型による十字及びT成形):これまで世界的にも直径0.8mm以下のマイクロチューブハイドロ成形に関する成功事例がなかった。本研究では比較検討のため、従来の剛体金型を用いて直径0.5mm,長さ3.2mmのマイクロチューブを用いた十字成形とT成形に成功した。その成形限界(成形高さ)も2倍に迫る高さも得られた。従来の均質マクロスケールFEM解析では実験結果を裏付ける結果を得た。今後検討を進める型開き(弾性変形)を許容する金型を用いる場合の基礎的な比較データはほぼ収集した。 (4)高圧負荷装置の改良:高圧負荷装置の構造を見直し従来の倍の400MPaまでの安定した超高圧負荷ができるように改良した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新構想の金型を用いるマイクロチューブハイドロ装置設計において、金型変形連成FEM解析による超高圧内圧負荷時の金型の型開き(弾性変形)を積極的に許容させる金型構造解析が順調に進捗していない。現在、試行錯誤でマイクロ金型の形状・寸法および拘束条件の最適モデリングを試みている。マイクロ金型の形状・寸法の修正は3次元モデリングのため、要素数も多くモデリング自体にかなりの時間を要するものである。これまで数多くの形状・寸法や拘束条件の修正などを繰り返していたため、結果的に進捗に遅れをとってしまった。 一方、併行して行ってきた本研究での比較データとなる重要な剛体金型でのマイクロ十字成形とT成形の実験とFEM解析に関しては、順調に多くの新たな研究成果が得られている。したがって、本研究の進捗状況は総合的にはそれほど大きな遅れではないと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)型開き(弾性変形)を許容する金型構造解析:本解析結果も得られる状況になりつつあるので、次年度には早急に解析を終えて、実際に型開きを許容する金型を有する装置を設計・試作し、実験的な検討に移れるようにする計画である。本実験に適した金型構造の最適化ができない場合でも実験的なアプローチで金型の型開きを許容した装置設計を行うことにしている。 (2)高圧負荷装置の性能向上:今年度の成果として、これまでの200MPaから倍の400MPaへの性能向上を実現できたので、この効果を活かしてより高圧負荷による本成形法の実現可能性も高まるものと考えている。 (3)超高圧振動負荷から準静的繰返し負荷方式:本研究では動的な振動負荷でなく、準静的な負荷を繰り返すことで本研究の目的の実現を推進する。マイクロチューブの材質や肉厚により金型が大きく変形しすぎる場合には装置上型開きのリミッタを設け、適正型開きの範囲に抑える。次に内圧を除荷したあと、次の工程で型開きをゼロにするべく型締め力を負荷し成形形状を元の金型形状までに矯正転写し、そのあと、再び型開きするように型締めを開放して再び超高圧負荷を繰り返す方式に改める。それによって、本加工法の可能性および有効性について究明する。FEM解析も含めて革新プロセスとなる本成形法の最適成形加工条件を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
大きな理由のひとつは、本年度中に高圧負荷装置の性能向上を達成できたためである。現有の高圧負荷装置の設計仕様は最大内圧400MPaであったが、これまで高圧負荷装置の構造上の問題から極わずかな漏れが生じ200MPaぐらいまでしか負荷できなかった。それも新構想プロセスの実現可能性を難しくしていた理由でもある。しかし、装置構造の見直しにより設計不備も見つかり、その改良が本年度中に達成できた。余裕を持って400MPaの負荷も確認できている状況である。さらなる負荷ができる可能性も見られる。そのため、次年度に装置改良のことも考えていたがその必要性もなくなった。さらに、本年度に剛体金型を用いた従来法による直径0.5mmのマイクロチューブのT成形、十字成形を世界で初めて成功したこともあり、世界でその成果を発表する経費が必要になった。
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次年度使用額の使用計画 |
先進的な金属マイクロフォーミングの研究が活発に行われている欧州での研究発表をするため、次年度の追加使用額として42万円ほどの繰越を行い外国旅費として執行計画を立てている。当初の平成29年度の旅費25万円(外国旅費計上済)と合算して、全体として約67万円での執行を計画する。 ESAFORM (アイルランド)15万円、ICF14(ギリシャ)19万円、ICTP2017(英国)27万円、国内学会 6万円
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