研究課題/領域番号 |
16K14441
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
瀧川 順庸 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70382231)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電解析出法 / アルミニウム合金 / 延性 / 脆化元素低減 / 固溶強化 |
研究実績の概要 |
ジメチルスルホン浴を用いた電解析出法による、高強度・高延性バルクナノ結晶アルミニウム合金の作製を目的として研究を行っている。具体的には、脆化元素である硫黄、塩素除去プロセスと、Mnなどの大きなミスフィットひずみを有する元素を過飽和に固溶させた過飽和固溶体合金作製プロセスを同時に実現する新たなプロセスを構築する。 平成28年度は「脆化元素を含まない合金作製プロセス構築」と「過飽和固溶体作製のためのプロセス最適化」をそれぞれ実施した。 「脆化元素を含まない合金作製プロセス構築」では、3種類の添加剤との組合せによる脆化元素共析濃度の関係を実験的に明らかにした。いずれの条件下においても、溶質元素濃度が増加しても脆化元素である硫黄・塩素濃度が0.15 at.%以下になることが明らかになった。すなわち、溶質元素を添加した3元系合金においても、脆化元素除去のための添加剤により、延性発現可能な硫黄・塩素濃度が0.15 at.%以下の材料を作製可能であることが明らかになった。 「過飽和固溶体作製のためのプロセス最適化」では、固溶量が多くなるプロセスが見つかりつつある。しかしながら、溶質元素の増加に伴い、表面の平滑性が失われる場合が多く、過飽和固溶体の作製が困難であった。そこで、添加によっても表面平滑性を失わない元素の探索を行った。その結果、Zrは過飽和に添加が可能であることが明らかになった。また、連携研究者の上杉が実施する、「第一原理計算による相互作用エネルギー算出の結果、表面平滑性と相関のあるパラメータについても見つかりつつある。今後は、その物理的意味について検討し、合金設計指針を明確にする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は「脆化元素を含まない合金作製プロセス構築」と「過飽和固溶体作製のためのプロセス最適化」の実施を予定していた。 「脆化元素を含まない合金作製プロセス構築」では溶質元素を添加した3元系合金においても、脆化元素除去のための添加剤により、延性発現可能な硫黄・塩素濃度が0.15 at.%以下の材料を作製可能であることが明らかになり、目標を達成した。 「過飽和固溶体作製のためのプロセス最適化」では、溶質元素の増加に伴い表面の平滑性が失われるという問題が生じ、当初予定していたMnの過飽和添加が困難となったが、新たに添加によっても表面平滑性を失わない元素を明らかにするとともに、「第一原理計算による相互作用エネルギー算出の結果、表面平滑性と相関のあるパラメータについても見つかりつつあり、おおむね目標を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は 平成28年度の研究によって得られた知見をもとに、脆化元素を含まない過飽和固溶体合金の作製を行う。これまでに、延性を発現するための脆化元素除去、表面平滑性の維持については指針が得られている。また、過飽和に固溶可能であることも確認できている。平成29年度の課題は、固溶強化および結晶粒微細化に有効な元素であり、かつ表面平滑性を維持できる元素を新たに探索することである。第一原理計算によって得られた表面平滑性と相関のあるパラメータを参考に、新たな添加元素について検討する。これにより、素形材プロセスを経ない高強度・高延性電解析出バルクナノ結晶Al合金の創製を実現する。
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