本研究は、容易に金型への凝着が生じるチタンの絞り加工における凝着抑制を目的としている。チタンの凝着は表面の酸化被膜が加工中に剥離し、金属の清浄面が露出した個所で金型と接触することに起因して、凝着が発生することに着目し、絞り加工中の酸化被膜の剥離を抑制することで、チタンの凝着を抑制する方法を提案した。具体的な凝着抑制技術(酸化被膜剥離抑制技術)として、「絞り加工が行われる金型内へ圧縮空気を積極的に援用すること」と「圧縮空気が金型内に円滑に入り込むために高周波振動を金型へ印加すること」に着目した内容であり、純チタンおよびチタン合金を対象として、本凝着抑制技術の骨子である圧縮空気の援用+高周波振動印加しわ抑え力を適用した絞り加工を行った。チタンの酸化膜は、陽極酸化、大気酸化および生成条件により、被膜膜厚、結晶構造が異なることから、それぞれの生成方法で酸化膜を有する純チタンおよびチタン合金を供試材として絞り加工を行った。また、各生成方法と膜厚によって、絞り加工における酸化膜が剥離する特性が異なるため、加工条件として、金型形状、金型の材質、加工速度、しわ抑え力といった一般的な絞り試験における基礎特性を取得した。その後、異なる条件における圧縮空気の援用+高周波振動印加しわ抑え力の効果を解明するために、圧縮空気の温度、圧力、また高周波振動印加の有無といった凝着抑制技術の適用を行った。平成30年度では、平成29年度で行った試験結果と合わせて、加工条件および凝着抑制手法の適用条件のデータベースの構築を行った。チタン表面に生成した酸化被膜に適した加工条件および凝着抑制手法の適用条件を選択することで、絞り比(ブランク直径/パンチ直径)2.1での円筒深絞り加工において、凝着を抑制する結果を得た。
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