研究課題/領域番号 |
16K14446
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長汐 晃輔 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20373441)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CVD / 直接成長 / グラフェン / h-BN |
研究実績の概要 |
次世代半導体チャネル材料として期待されるグラフェンデバイスの観点からは,原子レベルで平坦な絶縁性基板h-BN上でのみグラフェンの期待されるデバイス特性が報告されている.h-BN上へのグラフェン直接成長が期待されるが,h-BNにはグラフェン成長に必要な触媒作用は存在しないためh-BN上への成長は困難である.そこで,触媒機能としてCu蒸気を外部から導入し,h-BN上へのグラフェン成長及びデバイス動作が目的である.今年度は,3ゾーンのCVD炉を立ち上げ,炉内の温度分布の制御を行った.また,並行して,様々な2次元基板上にCVD成長させるために2次元結晶のヘテロ構造作成手法を検討した.レンズ形状のPDMS/PMMAを用いて,バルクh-BN結晶上にグラフェン転写を試みた.PMMAはガラス転移温度が55度程度であり,100度以上に加熱すると粘性が低下し密着性が向上する.この温度域でh-BNにPMMAを密着させるとピックアップが可能となることが分かった.しかしながら,高温でピックアップすると50%程度の確率でh-BNが割れることを確認した.そのため,高温で密着させた後,ガラス転移温度以下まで冷却し,PMMAをガ硬化させピックアップすることで割れることなくピックアップすることができることがわかった.また2次元結晶で2次元結晶をピックアップすることは非常に容易であり,ヘテロ構造は容易に形成可能である.以上のように今年度は,CVD用の炉の立ち上げおよびヘテロ構造作成技術を構築することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた装置の立ち上げ等はおおむね順調にすすんだため.
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今後の研究の推進方策 |
触媒金属蒸気を利用したh-BN上グラフェンの直接成長に対して,まずCu箔で実験を行う.Cu箔内に試料を設置可能なスペースを確保するため,まず円筒状を試す.Cu箔から離れた方がグラフェンの成長が安定するようであれば,Cu箔はハニカム等の形状も検討しCH4の分解能を向上させる.Cu箔は表面に酸化膜を有するので管状炉内でH2ガスの還元雰囲気で1000°Cで保持し,表面を清浄化させる等の検討が必要と予想される.また,他の触媒金属としては以下のように考えている.成長基板に触媒性を持たせる既存のCVD成長手法においては,グラフェンとの格子整合性や,分解したカーボン原子に対する固溶度の大きさ等を考慮して触媒金属を選択してきた.それ故,固溶限の小さいCuでは表面反応律速のため単層で成長が止まるが,固溶度が大きいNiではCを固溶し,冷却中に析出成長するため通常多層になる.蒸気で用いることから,触媒性の強い金属種が候補となるが,管状炉の最大温度が1100度程度であることを考えると,遷移金属ではなく触媒性のあるGeを検討する.
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