次世代半導体チャネル材料として期待される2層グラフェンのギャップ形成には,原子レベルで平坦かつ酸化物基板からの荷電不純物の影響を抑えるh-BNとの複層化が重要である.h-BN上への直接成長が期待されるが,h-BNにはグラフェン成長に必要な触媒作用は存在しないためh-BN上への成長は困難である.そこで,触媒機能としてCu蒸気を外部から導入し,h-BN上へのグラフェン成長を試みた.3ゾーンのCVD炉を立ち上げ,炉内の温度分布の調整を行い,Cuを高温域に置くことでCu蒸気によるCH4の分解によるh-BN上への成長を試みた.しかしながら,金属触媒を色々検討したもののh-BN上へのグラフェンの成長は困難であった.そこで,大きく方針を変え,グラフェンと異なりバンドギャップを有する2次元結晶であるMoS2のCVD成長を試みた.SiO2/Si基板上に3角形状の単層MoS2の形成に成功した.PL計測により,このMoS2は,成長の際にSiO2からのドーピングの影響により発光強度が強いが,SiO2とは化学的な結合はとっていないことが明らかとなった.また,2次元結晶の機械的なヘテロ構造作成手法を検討した.レンズ形状のPDMS/PMMAを用いて,バルクh-BN結晶上にグラフェン転写を試みた結果,PMMAのガラス転移温度以上に加熱することで,粘性が低下し,密着性向上により転写が容易になり,複層化できることが分かった.しかしながら,高温でピックアップすると50%程度の確立でh-BNが割れることを確認した.様々な検討を行った結果,高温で接触後,ガラス転移温度以下まで冷却し,PMMAを硬化させた後,ピックアップすることで,割れることなく複層化が可能であることがわかった.
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