研究課題/領域番号 |
16K14448
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
市野 良一 名古屋大学, 未来社会創造機構, 教授 (70223104)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 活性炭 / 磁性 / エポキシ樹脂 / 賦活処理 / 磁気分離 |
研究実績の概要 |
吸着体による微量汚染物質の吸着容量は吸着体の比表面積に比例する。一般的に粒子が微細なほど吸着容量は増加するが、活性炭のような比重の小さい粒子は微細化によって固液分離能が著しく低下する。これまでの活性炭と磁性材料の複合化の研究は、活性炭表面に磁性体を担持させたものであり、比表面積の減少と磁性体の脱落等の課題がある。そこで、本研究ではこれらの欠点を克服すべく、活性炭の内部に磁性体を複合した磁性活性炭を作製する。 活性炭原料には熱硬化性のエポキシ樹脂を用い、Fe3O4を添加し、室温で硬化させた。硬化した樹脂を粉砕後、Ar雰囲気下で炭化処理を行った。この炭化物にKOH水溶液を含浸させ、真空乾燥後にAr雰囲気下で賦活処理を施した。得られた試料を蒸留水で洗浄し、蒸留水中で磁気分離し、磁性活性炭とした。 磁性活性炭にFe3O4のピークは検出されずFeのピークのみが検出された。これは、活性炭の主成分であるCがFe3O4をFeに還元したものと考えられる。 窒素吸脱着等温線を測定し、比表面積、細孔容積、細孔径分布を求めた。メソ孔径分布については、市販活性炭とFe3O4無添加活性炭に比べて、磁性活性炭は孔径20 nm以上の孔が多かった。作製した活性炭のメソ孔容積は市販活性炭より小さく、メソ孔容積と比表面積には相関がなかった。各活性炭のマイクロ孔径分布のピークは0.6 nmであり、マイクロ孔容積が大きいほど、比表面積が増加した。固液分離能は水中で浮遊する吸着体の濁度により評価し、磁石を用いずに静置した場合、各活性炭の濁度は2時間静置してもほとんど減少しなかったが、磁石を用いた場合、磁性活性炭の濁度は短時間で大きく減少し、磁性活性炭は磁気分離が可能であった。 メチレンブルー(MB)の吸着試験を行ったところ、メソ孔容積が大きい方がMBの吸着容量が高く、MBの吸着にはメソ孔が関係していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱硬化性のエポキシ樹脂にFe3O4粒子を添加して硬化させることにより、磁性を持った活性炭ができたこと、また磁気分離能を有していたことより、本年度の目的は達成できた。 700℃で賦活処理したところ、Fe3O4がFeに還元されたことは予定外であったが、Feは強磁性であることから、磁気分離に対しては何の問題もない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、Fe3O4含有率の効果、アルカリ賦活処理の条件(温度、時間、アルカリ試薬種類、試薬量)の調査、吸着体の粒子径、分離能などについて詳細に調査する。また、表面に表れているFeは吸着の妨げになる可能性があるため、予め酸で溶解し、完全に内包された吸着体の完成を目指す。 また、吸着能の評価についても、活性炭表面の濡れ性を変化させて、メチレンブルーのみならず、有害化学物質についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表の旅費や試薬や器具類の消耗品費を間接経費と校費で支払ったため、直接経費で使用する予定の消耗品予算に残額が生じた。校費支払いでの、試薬や器具類の消耗品の購入は十分できたため実験の遂行ができた。途中で、初年度に作製した磁性活性炭の磁気分離能、メチレンブルーの吸着能を評価したところ、磁気分離能や吸着能をもっているところまでは評価できたので、当初計画の予定よりも進捗状況が早いと考え、平成29年度に国内会議のほか国際会議の参加を計画し、そちらへの旅費・参加費に充てることにした。そのため、次年度の使用金額の増額が必要となり繰り越した次第である。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に磁気分離ができること、メチレンブルーに対して吸着能があることがわかったので、次年度では、さらに詳細なデータを集める。具体的には、Fe3O4含有率の効果、アルカリ賦活処理の条件(温度、時間、アルカリ試薬種類、試薬量)の調査、吸着体の粒子径、磁気分離能などについて調査し、最適化を図る。また、表面に現れているFeは吸着の妨げになる可能性があるため、予め酸で溶解し、最終的に完全に内包された吸着体の完成を目指す。さらに、吸着能の評価についても、メチレンブルーのみならず、有害化学物質の吸着特性や、活性炭表面の親水性・疎水性付与による吸着物質への効果についても検討する。平成29年度には国内会議のほか国際会議で発表する。
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