吸着材による微小汚染物質の吸着容量は比表面積の増加により高くなるが、その一方で吸着材の微細化により固液分離能が低下する。そこで、磁気で分離できる磁性体と活性炭の複合化を実施した。さらに、磁性体を活性炭に内包させることにより、比表面積の減少と磁性体の脱落を克服できると考えた。 活性炭原料には熱硬化性のエポキシ樹脂、磁性体にはマグネタイト(Fe3O4)を用い、室温で硬化させた。硬化した樹脂は粉砕後、Arガス雰囲気下で炭化処理を行った。この炭化物にKOH水溶液を含浸させ、真空乾燥後に再びArガス雰囲気下で賦活処理を施した。得られた試料は蒸留水で洗浄し、蒸留水中で磁気分離を行い、磁性活性炭(MAC)とした。炭化温度500~700℃、Fe複合率4.0~20.4mass%、賦活温度600~900℃の条件でMACを作製した。 XRD測定結果より、MACは賦活段階でFe3O4がFeに還元された。また、一部のMACは表面のFeが洗浄-乾燥段階で酸化され、マグへマイトのピークが確認された。T-成分が確認された700℃の炭化MACを除き、他の炭化条件で作製したMACは比表面積、比細孔容積、メチレンブルー(MB)吸着能において大きな違いはなかった。 Fe複合率14.8mass%以上のMACの濁度はいずれも、2分以内に目標の15mg/Lを下回り、高磁気分離能を有した。一方、鉄複合率が増加するとMB吸着能が低下した。これは、鉄複合率の増加に伴い細孔壁面に存在するFeが増加し吸着サイトを占有することや、一粒子当たりのFeの重量増加による活性炭の減少が考えられる。孔径1.0nm以上の細孔の積算比表面積とMB吸着能には相関がなかったが、活性炭のみの質量に換算した場合、MAC中の活性炭1g当たりの飽和吸着量にFe複合率の影響はなかった。賦活温度とKOH含浸率はMACの細孔特性に大きな影響を及ぼした。
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