β-C3N4はダイヤモンド以上の硬さを有する物質として、計算科学の見地から予見されてきた。しかし、実際の合成では、未だに成功例がない。本研究では、液中のソリューションプラズマプロセスを用いてβ-C3N4の合成を試みた。平成28年度は、ダイヤモンドとβ-C3N4の合成をめざし、アダマンタンまたはヘキサメチレンテトラミンを出発原料に選択し合成した。しかし、どちらの原料からも処理後の溶液中には大量の粉末が生成した。得られた粉末のSEM観察から、数十ミクロンの中空六角柱の構造が多数観察できた。XRD分析より一定の周期構造(結晶構造)を有することを明らかにした。この周期構造は、分子性結晶に起因する。そこで、本年度は、ソリューションプラズマ形成条件を変化させ、最終生成物の評価と特性の探索を行った。特性の探索には、シート抵抗、走査型示差熱分析(DSC)及び等温吸着実験を行った。シート抵抗は3200Ω/□であり、導電体とは言えない。このため、原料分子に内在しているsp3構造が生成物へと継承されていることがわかる。また、得られた物質は、200℃程度から熱分解が始まり、280℃では、完全に炭化した。このことは、高分子系材料のDSC結果と類似している。また、得られた等温吸着線はⅢ型を示し、マイクロポアによるガス吸着が進むことが判明した。また、窒素含有量が多いため、ガスとの相互作用も比較的大きい。一方、比表面積は、通常のカーボン材料より低く、約1/100を示した。以上より、当初目的としたβ-C3N4を合成を達成することはできなかったが、β-C3N4の分子レベルでの骨格を有する高分子を新たに合成することに成功した。この高分子材料は、ガスとの相互作用が良好であり、ガス脱吸着材として展開できる可能性がある。
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