本研究は、鉄鋼精錬プロセスにおいて、反応容器内で起こるメゾスケールな界面現象によって発生する多量のマイクロバブルの生成量(反応効率に関係する)と、マイクロバブルが発生するときに生じる音圧スペクトルの相関について調べ、反応プロセスの効率にとって重要である気液界面現象を音響学的に診断する手法の可能性の探求を試みたものである。 昨年度行った研究では、水浴内でノズルから生成される気泡が放射する音を、浴外に設置した騒音計により録音し、周波数解析を行った。その実験手法では、複数の気泡が合泡するときに起こるレイリージェットという、反応に非常に寄与する現象を音圧スペクトルにおける卓越周波数として捉えることができたものの、外環境から混入するノイズの影響が大きく単一気泡が発するときの弱い卓越周波数を明瞭に捉えることが容易ではなかった。 そこで本年度の研究では、ノズル近傍の水浴中に設置した水中マイクを用いることにより、ノズルから単一気泡が生成するときに放射される音について、微弱な音圧まで明瞭に記録することが可能となった。さらに、マイクロ秒のオーダで水中マイクと同期させた高速度カメラの画像から、気泡がノズルから成長・離脱するときの音圧の変化を時系列で捉えることに成功した。 本研究で構築した計測手法は、ノズルから離脱する単一気泡自身の成長・離脱・崩壊の際に発する音圧スペクトルから、複数気泡が合泡するときに起こるレイリージェット現象による卓越周波数に至るまで捉えることに成功した。これにより、反応プロセスの効率を音響学的診断に診断するための基礎技術を構築できたと考えている。
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