医療分野などで利用されているマイクロリアクターでは、原料混合のための長い流路が必要とされる。それをなくすために、ヘルムホルツ共振容器単一、あるいはそれが連結した容器を提案する。このような容器への超音波を印加したときの流動や反応速度などの容器内現象を、ひとかたまりで捉えずに、ミクロスケールで物理的、化学的観点から解明することが本研究の目的である。 そこで、H28年度は流動、反応の観察を目的として、三次元音場解析を利用したヘルムホルツ共振容器の設計を行い、それに基づいて容器の試作を行った。液体として、脱気水、あるいは炭酸水を用いて超音波印加実験を行った。同一容器で液深を変化させた場合、ある特定の液深でのみ共振が観察されたことから、液深による共振制御が可能であることを明らかにした。しかしながら、容器サイズが大きくなると共振は観察されなくなった。これは、超音波のパワー不足であると推測された。また、気泡生成を超音波による化学反応促進効果の指標としたが、評価が困難であった。 H29年度は前年度の結果を踏まえて、溶液をヨウ化カリウム水溶液へ変更するとともに、容器を小さくし、かつ周波数を高精度で制御するように実験系、実験方法を改良した。その結果、溶質輸送を担い、かつマクロスケール対流である音響流を抑制した条件下での容器内の化学反応速度の空間分布、経時変化の推定が可能となった。すなわち、従来の超音波の化学反応速度促進効果は、容器レベルで超音波印加前後の化学種の変化量を比較するマクロな評価がもっぱらであったが、容器内の局所的な反応速度の経時変化が推定可能となった。将来的に超音波強度計測と組み合わせることで、化学反応速度促進に及ぼす超音波強度の効果を定量的に評価する道を拓いたといえる。
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