2種の異なる水相で油相を挟み込んだ複合スラグ流を用いると、一方の水相から抽出をおこなうと同時に抽出成分をもう一方の水相に逆抽出を行うことが可能である。この時、油相のキャリア成分濃度によらず平衡状態が決まるため、原料相から回収相への抽出が効率的に行える。同様な手法として液膜抽出法があるが、物質移動速度が膜厚に依存するためμmオーダーの薄膜化が必要であり、安定性に問題が生じる。特に放射性金属の抽出などわずかな流出が問題なとるケースでは実用性に堪えない。それに対してスラグ流ではmmオーダーでも循環流により界面が更新されるため物質移動速度が大きく、安定性にも優れている。 本研究では、複合スラグ流を安定に作製することを目的に、電磁弁を用いて液供給のON/OFFを機械的に操作して広い操作範囲でスラグ流を作製し、その安定性の評価を行った。 各流路・合流部条件について、液の総流量、電磁弁の切替周波数に対して、流れの様子を観察した。操作条件によって流れは①安定なスラグ流、②分裂(水相が分解)、③層流に変化した。電磁弁がない場合は総流量と周波数には線形で相関でき、キャピラリー数Caの範囲が 0.0005 < Ca < 0.0011の範囲において安定したスラグ流が生成するのに対し、電磁弁を用いた場合はより広い領域でスラグ流を安定して生成できることを明らかにした。従来法ではスラグの体積は流量とミキサー内径によりほぼ決定されたが、本法では同じ条件でも種々のサイズのスラグを生成を可能とした。 この知見をもとに複合スラグ流を作製し、Ceイオンの抽出、逆抽出を行った。滞留時間は16 sとした。滞留時間の不足のため、Ceイオンの回収率は16%であったが、油相に抽出したCeイオンの大部分を逆抽出できていることが確認でき、滞留時間の増加により回収率の向上が見込まれた。
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