| 研究課題/領域番号 |
16K14463
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| 研究機関 | 九州大学 |
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研究代表者 |
岩下 靖孝 九州大学, 理学研究院, 助教 (50552494)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | エマルション / コロイド粒子 / 異方性粒子 / ナノ・マイクロ科学 |
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| 研究実績の概要 |
ピッカリングエマルション（以下PE）とは、強い界面活性を持つ微粒子によって非相溶な液体同士の分散状態が安定化されたものである。このとき粒子形状が分散状態に大きな影響を及ぼすが、その効果の全容は未解明である。我々は形状と化学的性質を高度に制御した両親媒性正多角形微粒子を作成し、形状の効果を解明することを目的として研究を行っている。
平成28年度は両親媒性正多角形粒子の作成手法を確立した。作成した正三角形粒子を用いて油中水滴型のエマルションを作成したところ、大きな液滴の界面で正三角形が隙間なく規則的に充填された最密充填構造を実現することに成功した。平成29年はさらに正方形、正五角形、正六角形による液滴形成を行い、さらに液滴サイズと粒子の構造についても調べた。その結果、何れも液滴サイズが10粒子分程度以上のとき、液滴の界面では平面での正多角形の最密充填構造が現れることが分かった。正三角形、正方形、正六角形ではほぼ隙間のない充填構造となり、各形状を反映した回転対称性を局所的に持つ。正五角形は平面を隙間なく充填できないが、やはりその最密充填構造（被覆率0.92）を示した。さらに液適サイズが小さいとき、正四面体、立方体、正十二面体と言った正多面体（プラトンの立体）が好まれることが分かった。また同じ手法で両親媒性を付与していない正多角形粒子を用いたところ、大きな液滴での界面充填構造は乱れが多く非最密的になり、正多面体状の小液滴はほとんど形成されなかった。このように、平板状粒子に両親媒性を付与することにより、粒子の幾何学的特徴がエマルション液滴の形態やエマルション中での粒子の自己集合構造に支配的な影響を及ぼすことを解明した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように、様々な形状の粒子を用いることにより、表面物性と形状という異なる粒子異方性とエマルション状態の関係を明確に示すことができた。多様な実験条件の元で得られたデータを詳しく解析することで、ある程度定量的なデータを得ることができた。これらの成果は本研究に依って初めて明らかになったものであり、充分な研究成果が挙がったものと考えている。これらについては現在論文を投稿中である。
一方、粒子の厚さなど当初想定していなかったパラメータに関する研究や、粒子作成装置の故障もあり、当初予定していた3次元構造観察は見送った。これまでの研究成果に基づき、今後3次元構造観察を行っていきたい。
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| 今後の研究の推進方策 |
まずはこれまでの研究成果に基づき、X線トモグラフィによる3次元観察を行いたい。これにより粒子の界面充填構造や液滴の3次元構造を定量的に調べ、粒子形状や両親媒性が自己集合構造に及ぼす影響を統計的にも解明する。さらにこれまでの研究の中で、平板状粒子の曲率など粒子形状を3次元的にも制御しうる可能性が示された。これにより当初の想定を超えた新規なエマルションが実現しうる可能性があるため、粒子の3次元形状に関する研究にも取り組みたい。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では薄い板状粒子を用いたエマルション構造の3次元観察を予定しており、そのための試料作成費、機器使用料などを計上していた。しかし粒子の厚さなど3次元形状への依存性について興味深い結果が出たため、そちらの研究を優先した。また2017年末に粒子作成装置が故障したため、研究の遅延も生じた。よって現在行っている粒子の3次元形状に関する研究結果にも基づき、2018年度に3次元構造観察を行いたい。
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