近年、日本では食生活の欧米化によるタンパク質摂取量の増加が原因で、尿路結石症患者数は年々増加している。尿路結石は体内に生じる結晶によって引き起こされる疾患の一つであり、その結晶の主成分はシュウ酸カルシウム(CaC2O4)であることは既に明らかになっているが、CaC2O4結晶そのものについての知見は極めて少ない。尿に含まれるシュウ酸とカルシウムの濃度が高くなることでCaC2O4結晶が析出しやすくなり、疾患へとつながる。そこで、水のみを透過させる膜を用いて膜濃縮を行い、腎臓の作用を簡易的に再現することで、CaC2O4結晶析出挙動の解明を目的とした。また、CaC2O4結晶が析出しない条件を検討するために、医学分野においてCaC2O4結晶の析出を抑制し、尿中の成分であり、生体適合性に問題がないクエン酸とマグネシウムを用いて実験を行った。 その結果、膜濃縮によりCaC2O4結晶の核化・成長が確認できた。また、添加剤を変化させることで析出するCaC2O4結晶が変わり、添加した系では不安定な二水和物、三水和物が析出し、原尿組成に最も近い添加系では析出した結晶の大きさが大きくなることが確認された。これらの知見は、尿路結石の予防および再発に寄与できるものと考える。
|