本年度の研究では、はんだナノ粒子合成に必要な流通式連続合成装置の新規製作および健全性確認を終えるとともに,実際に装置を使用してSnO2ナノ粒子(SnO2NPs)やSn-Ag-Cu合金ナノ粒子(SACNPs)の合成反応を検討し,生成した粒子の評価を行った. まずSnO2NPsについては,反応条件を温度140-400 ℃,圧力30 MPaとした.このとき,原料溶液には表面修飾剤としてPVP(Polyvinylpyrrolidone)を用い,PVPモノマー/Sn比が0.5から5(mol基準)となるように加えたもの使用した.原料溶液と予熱水を適切な流量比にて送液することで,所望の反応条件になるように調整した.反応温度で比較すると,140℃から180℃までは温度上昇にともない粒径が減少し,それ以上では増大する結果となった.これは,180℃までは過飽和度が増大し核生成が優勢となったため粒径が小さく制御され,それ以上の温度では反対に粒子成長が優勢になったと考えられる. SnO2NPs合成時と同様の流通装置を用い,原料溶液に酢酸Agおよび酢酸Cuを追加した上で,SACNPsの合成を検討した.このときSn/Ag/Cu比が96.5/3.0/0.5 wt%となるように調整し,また,予熱水用の溶液には還元剤としてギ酸を添加した.ギ酸無添加系における生成粒子径はSnO2の粒子径と同等であったが,添加系では粒子径とともに回収率も低下した.これは,ギ酸添加により還元された粒子の一部分が,粒子径低下により融点が反応温度以下となり管内にて溶融し,最終的に冷却部付近で固化した可能性が示唆された.以上のことから,SACNPsの合成には融点と粒径の関係を定量的に評価する必要があると考えられる.
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