本研究では,新規なポリマー合成法である超音波ラジカル重合法において,超音波照射条件を精緻に制御することで分子量分布の極めて狭い,かつ所望の組成を有する共重合ポリマーを合成するプロセスを構築することを目的とした。具体的には,感温性を有するポリN-イソプロピルアクリルアミドと強度を付与するポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの共重合コポリマーを対象として,超音波照射条件を制御することでラジカル発生速度,重合速度,生成ポリマー分解速度を制御し,分子量分布の指標である分散度を1.5以下に保持しつつ,所望の共重合組成を有するコポリマーを合成した。研究遂行により,以下のことを解明した。 1.先ず,基礎的知見として,ポリN-イソプロピルアクリルアミドとポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの共重合ポリマー合成実験を行なった。そして,合成実験における操作因子と生成共重合ポリマーの分子量,分散度,共重合組成との関係,生成した共重合ポリマーの分子量,分散度,共重合組成と温度応答性との関係を明らかにした。 2.超音波照射による共重合ポリマーの生成機構を検討した。そして,開始剤となるラジカル生成の速度は超音波強度に比例すること,生成ポリマーの分解によってポリマーラジカルが生成することを明らかにした。 3.超音波照射下における共重合ポリマー生成速度論モデルを構築した。反応機構は次の通りである。超音波照射によってラジカルが生成する。このラジカルを開始剤として共重合成長反応,それに続く停止反応が進行する。また,せん断力によるポリマーの分解によってもポリマーラジカルが生成する。構築した速度論モデルを用いて,転化率,分子量,分子量分布,共重合組成を表現できた。 以上,超音波照射条件を制御することで分散度を1.5以下に保持しつつ,所望の共重合組成を有するコポリマーを合成するプロセスが確立された。
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