研究課題/領域番号 |
16K14468
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 誠一 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (40723284)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / ビルディングブロック / 集合体 / 有機半導体ポリマー / 環境応答性 / イメージング / DDS |
研究実績の概要 |
金属や半導体など、非生分解性のナノ粒子を生体内で用いる際、粒子が体外に腎排泄されるためには粒径がシングルナノメートルであることが必要だが、腫瘍組織への集積には100 nm程度が望ましい。このようなサイズの矛盾を解消するため、本研究ではシングルナノメートルの粒子をビルディングブロックとし、これらをリンカー分子によって組み上げることで、100 nm程度のケージ状構造体を作製する。リンカーに環境応答性の分解部位を導入することで、標的に集積するまでは100 nm程度の集合体構造を保ち、その後リンカーの分解によって一次粒子の状態に戻り腎排泄される、新規のキャリアを開発することを目指す。 今年度は、昨年度に合成法を確立したペプチド修飾金ナノ粒子と有機半導体ポリマー蛍光ナノ粒子をビルディングブロックとして用いた、粒子集合体の作製を検討した。まず、金表面とチオールとの反応を利用して、C末端にシステインを有するMMP分解性ペプチドを金ナノ粒子表面に修飾した。また、有機半導体ポリマー蛍光ナノ粒子の合成の際にpoly(styrene-co-maleic anhydride) を安定化剤として用いることで、粒子表面にマレイン酸を導入した。これらを用い、カルボジイミドによって金ナノ粒子表面のペプチドのN末端と有機半導体ナノ粒子表面のカルボキシ基とを結合させることで、金ナノ粒子の周囲を有機半導体ポリマーナノ粒子が取り囲んだケージ状構造体の作製に成功した。この構造体は金ナノ粒子によるクエンチ効果によって励起光を照射しても蛍光を発しないが、腫瘍に存在するMMPによってリンカーのペプチドが分解されることで集合体構造が解裂し、蛍光を発することが期待される。しかし、粒子集合体をMMPの一つであるコラゲナーゼとインキュベートした結果、有意な蛍光強度の増加は認められず、さらなる材料設計改善の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の検討により、金ナノ粒子と有機半導体ポリマーナノ粒子をビルディングブロックとしたケージ状粒子集合体の作製に成功した。今後粒子設計をさらに改良することで、腫瘍環境で特異的に解裂し、それに伴い蛍光を発現する、新規のキャリア粒子を作製できると期待される。そのため、全体としての進捗状況は、おおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度作製した粒子集合体にMMPによる分解性が認められなかった原因として、粒子同士の隙間が狭く、MMPがリンカーと接触できなかったことなどが考えられる。今後は、リンカーの長さや種類などを変えることで集合体構造を最適化し、MMPによる分解性の付与を目指す。さらに、得られた粒子集合体の腫瘍への集積と腫瘍環境に応答した分解、及びそれに伴う蛍光の発現を、in vitro 及びin vivoの実験で実証していく。
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