従来の低反射率フィルムよりも反射率が1/30以下の超低反射率フィルムを高圧露光装置により作製することに成功した。従来品よりも低反射が起こるメカニズムは,ポリカーボネートフィルム上に紫外線硬化樹脂が部分的に溶解し,球晶形成を促すことにより,フィルム表面に拡散反射層が形成され,かつ,結晶表面に100ナノメートルオーダーの微細な突起が生成されたことにより,拡散反射効果とモスアイ効果を同時に実現できたため大幅な反射率の低下が起こったことが明らかになった。研究当初は,フィルム内に数百ナノメートルオーダの気泡が存在していることを予想していたが,これは電子顕微鏡などによる観察の結果,否定された。 この方法で作成されたフィルムは,低反射率にもかかわらず,文字に接触させると文字がフィルムを透過して見えることから,外光の影響が著しい夏場の日中などで液晶モニタを視認する用途に適していると考えている。また,近赤外領域についても可視光域と同等の低反射率特性を有していることから,暗視カメラなど様々な分野への展開が期待される。
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