研究実績の概要 |
我々が世界に先駆けて開発した高圧露光装置により,ポリカーボネートフィルム上に超低反射率の光学膜を形成することに成功した。この膜は,従来の低反射フィルムと比較して,反射率が低く,その膜が形成されるメカニズムと合わせて,すでに論文(Taki, K.; Niinuma, K.; Hariu, A.; Ito, H. Journal of Photopolymer Science and Technology 2017, 30, (2), 235-240. )として成果を公表している。 しかしながら,高圧露光装置は比較的大掛かりな装置であり,本研究の作製原理を生かして,より簡便で生産性の高い方法を模索することが2年目の課題であった。そこで,紫外線硬化樹脂を水面上に展開して,紫外線を照射することで,数ミクロン程度のしわがあるフィルムを容易に作成できることが分かった。この方法は従来法よりも反射率の観点では劣るものの,作成が容易であり,しわの間隔を小さくすることで,反射率を改善できる余地があることから,基本的な作成原理と効用について大学を通じて特許(特願2017-107406)を出願した。 さらに紫外線硬化樹脂を展開している水中に水溶性の重合禁止剤を添加することで,フィルムの両面にリンクルを作製できるほか,他官能のUV硬化樹脂を添加すると,サブミクロンオーダのリンクルも形成可能であることが明らかになった。これらのフィルムは,反射率の角度依存性に優れており,より拡散反射が起こりやすくなっている。一方で,当初期待していたような,モスアイ効果は得られておらず,さらにリンクルを微細化していく必要がある。
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