研究課題/領域番号 |
16K14471
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 浩行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40263115)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / トルエン / 酸化分解 |
研究実績の概要 |
大気圧プラズマの放電電極として,2本のテフロン被覆銅線(線直径 = 0.26 mm, PTFE被覆厚=0.15 mm)を互いに撚ったものを作成し,パイレックス製二重管の内管の周囲に巻きつけてプラズマ発生部とした。反応器は供給ガスが二重管外管よりプラズマ発生部を通過し,内管内を通って排出する構造とした。この構造により,供給されたガスは,プラズマ発生部である電極周囲を流れ,発生したプラズマと効率よく接触できるようになっている。 開発したプラズマリアクターにトルエン濃度が100~400 ppmであるヘリウム希釈酸素(酸素濃度21%)を供給し,高周波電圧を印加してプラズマを発生させた。周波数が10kHzにおいて,1.7 kVという低い電圧でプラズマを発生させることができており,効率的なプラズマ発生が期待できる。プラズマ部を通過した排出ガスは,ガスクロにより,トルエン,CO,CO2を定量分析した。 供給するガス流量250 mL/min,トルエン濃度200 ppm,電極長さ20 cm,周波数10 kHzにおいて,供給したトルエンの50%を分解することができた。このとき,CO2の発生は見られず,COは供給したトルエンの15%生成していた。ここでは,炭素基準でのCOとCO2へ転換できた割合をCOx収率と定義する。COx収率は,トルエンの無機化の進行度を表し,非常に重要な評価指標である。周波数を10 kHzに固定し,ガス流量,トルエン濃度,電極長さを変化させて分解実験を行い,トルエン分解率および無機化率を算出した。その結果,消費エネルギーが大きいほど,高いトルエンの分解量が得られたが,その関係は,ガス流量,トルエン濃度によらなかった。よって,所定の分解率を得るために必要な投入エネルギーを簡単に推定することができることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
考案した大気圧プラズマリアクターを用いて気相中のトルエンの分解を実施し,比較的低電圧でプラズマを発生させることに成功し,気相中のトルエンを分解できることを示すことができた。電極長さ(電極面積に相当)とガス流量,トルエン濃度の関係から,所定の分解率(分解量)を得るために必要な投入エネルギー(プラズマ発生に必要な電気エネルギー)を推定できることを明らかにした。 以上の結果・成果は,計画とほぼ同じように進展しており,順調に研究を遂行できていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
操作条件として,さらに周波数および水蒸気添加の影響を検討する。周波数は,プラズマによる活性ラジカルの生成挙動に影響を与え,水蒸気添加では水の分解によるOHラジカルの生成も期待できる。また,酸素存在下でプラズマを発生させると,オゾンも生成するため,オゾンの定量も行う。平成28年度では,開発した反応器によるトルエンの分解率および無機化率は,最高でもそれぞれ70%と30%であった。さらなるエネルギーの投入で,分解を促進することは可能であると考えられるが,高い分解率および無機化率を達成するためには,多大なエネルギー投入が必要であると考えられる。そのため,これ以上のエネルギーの投入なしに酸化分解を促進するため,触媒との併用を検討する。プラズマ発生部への影響を考えると,圧力損失の小さいシステムが必要であるため,ハニカム触媒を採用する。ハニカム触媒をプラズマ発生部の後流である内管にセットし,プラズマ発生部通過直後に触媒部でさらに分解できる構造とする。触媒は,オゾンの分解活性が高いマンガン担持ゼオライトをハニカムに担持したものを使用する。この触媒搭載型大気圧プラズマリアクターを用いて,トルエンの分解を行い,触媒搭載の効果を検討するとともに分解に対するエネルギー効率を既往の研究と比較し,本手法の有効性について検討する。
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