研究課題/領域番号 |
16K14476
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大山 順也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50611597)
|
研究分担者 |
薩摩 篤 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00215758)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 金属ナノ粒子 / 固体触媒 / 電子顕微鏡 / 原子レベル / サイズ / 結晶性 |
研究実績の概要 |
本研究では、担持金属ナノ粒子触媒のサイズ効果を原子レベルで解明することを目的とし、収差補正(走査)透過型電子顕微鏡Cs-S/TEMなどの原子スケール解析が可能な手法を用いることによって、金属ナノ粒子のサイズと触媒活性の関係を調査した。本年度は、(1)さまざまな条件で調製したAl2O3担持Pd触媒において、Pd単原子をも含むサイズ解析を行い、CO酸化反応に高活性なPd種を特定した。さらに、(2)Al2O3担持Pd触媒を用いたメタン燃焼反応において、金属-担体間相互作用(MSI)による担持金属粒子の結晶性・形状の変化に注目し、γ,θ,α相の異なる3種のAl2O3を担体として用いることで、MSIによって変わるサイズ効果について原子レベルで解析した。結晶相の異なるAl2O3上に担持した1-2 nmのPd粒子は、いずれの相のAl2O3上でも乱れた原子配列を示したが、Pdナノ粒子が成長するとAl2O3の相によって異なる構造を示した。γ-Al2O3上では、粒子が大きくなっても歪んだ構造を保ち表面・内部の原子配列が大きく乱れていた。一方、θおよびα-Al2O3上では、5 nm程度の大きさではPd粒子は原子配列にある程度乱れはあるがfcc構造の規則性を示し、表面にステップが多くみられる球形状を示し、さらにサイズが大きくなると粒子は明確な面を示した。担体のAl2O3の結晶相、つまり、MSIの強さによって金属ナノ粒子の原子配列(結晶性)と形状が変わることが分かった。3種の相のAl2O3上にさまざまなサイズのPd粒子を調製し、メタン燃焼反応を行った結果、粒子構造と同様にγ-Al2O3とθ,α-Al2O3の間で異なり、θ,α-Al2O3上の5 nm程度のPdナノ粒子が多く持つステップサイトがメタン燃焼に高い触媒性能を持つことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた(1)原子スケール観察で得たサイズ分布の定量性についてCO吸着量と比較可能なデータを収集することができている。(2)Al2O3担持Pd触媒を用いたCO酸化反応についてサイズ効果を解析し、高活性サイズを特定した。(3)担体を変化させたときのサイズ効果について、異なる結晶相のAl2O3を担体に用いたPd触媒を用いて取り組んだ結果、担体によってMSIが変化し、MSIと粒子サイズによって金属ナノ粒子の結晶性・形状が変化することが原子スケール解析によってはじめて明らかになった。さらに、メタン燃焼におけるPd触媒表面の高活性種も提案することができた。以上より研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
H30年度は(1)サイズ分布の定量性の評価、(2)原子配列乱れの平均情報の取得、(3)表面高活性種の検証を進める。(1)については、これまでに取得してきたサイズ分布とCO化学吸着量とを照合することで評価する。(2)については、電子顕微鏡観察による原子スケール観察で見られた、ナノサイズになると発現する原子配列の乱れ(結晶性の乱れ)について、その平均情報を数値化することにチャレンジする。X線回折・散乱の技術を用いることを計画している。(3)について、H29年度までにPd/Al2O3を用いたメタン燃焼において示唆された高活性なサイズと表面種の検証を行う。具体的に、ナノ粒子の液相合成法などを取り入れ、ステップサイトを多く有する球状のPdナノ粒子をさまざまなサイズで調製し活性評価を行うことでH29年度に提案した高活性なサイズと表面種を検証する。
|