担持金属ナノ粒子触媒のサイズおよびナノサイズで現れる構造の効果を原子レベルで解明することを目的とし、収差補正(走査)透過型電子顕微鏡Cs-S/TEM等の手法を用いて原子スケールでの触媒解析を行い、触媒の構造と活性の関係を調査してきた。本年度は、(1)原子スケール解析を導入することで初めて解析できる構造効果、(2)原子スケール解析で明かになる構造の新たな解析手法の開発、(3)ナノ粒子で現れる原子配列の乱れの解析に取り組み、以下の成果を得た。 (1)本年度は、CO酸化反応おけるPd/Al2O3の構造効果についての検討を進め、Pd/Al2O3の活性サイトを特定した。具体的に、CO酸化反応にはPdクラスター/ナノ粒子のコーナー/プレーンが高活性サイトであると示した。一方、これまでの研究でCH4酸化ではPd粒子のステップが高活性であることを見出している。つまり、反応物によって触媒活性サイトが異なることが明らかになった(論文投稿中)。また、CH4酸化については、球状Pdナノ粒子を液相合成法によって調製し、ステップサイトが高活性サイトであることを実証した(論文執筆中)。 (2)従来の表面配位不飽和度とは異なる構造効果として多重双晶ナノ粒子の構造歪みの効果が報告されている。本年度の研究では、双晶構造を判別するために人工知能技術の画像認識手法を導入した。具体的に、ディープラーニングの代表的な手法であるConvolutional Neural Networkを導入し、実像データ内においては、ナノ粒子の双晶構造の判別に成功した。 (3)粒子がナノサイズになると発現する原子配列の乱れ(結晶性の乱れ)の平均情報の数値化に着手し、達成可能である見通しができた。今後、解析を進め成果発表していく。
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