持続可能な社会のためには、化学はカーボンニュートラルのシステムを構築する必要があり、現在の化石資源に基盤を置いた化合物の世界から、再生可能なバイオマス資源を有効利用する世界へのシフトが求められる。本研究では、バイオマス資源から得られるポリオール類を、石油化学代替ルートに適用できる化合物に誘導する反応の開発を目指した。 2年間にわたって、本研究の目的とした各種のアルコール類の末端ヒドロキシメチル基(1級水酸基)を脱離させて、1炭素減炭した化合物を得る反応を促進する新規な触媒を研究した結果、Scientific Reports誌に掲載された成果をあげることができた。特にこの論文は世界的に注目度の高い同誌の中でもトップ100に選ばれており、本研究のインパクトの大きさが示される。しかも本研究で開発したRu/CeO2触媒は、目的とした末端水酸基だけでなく、カルボン酸・エステル・ラクトンなどの含酸素化合物を1炭素減炭した化合物に収率よく変換することが可能であった。 この反応の詳細については現在検討中であるが、当初の設計指針、(i)還元剤として汎用される分子状水素を用いるので水素活性化能力を有する貴金属と、(ii)脱酸素を行うので酸素官能基に対して親和性の高い金属酸化物とを、(iii)複合化させた固体触媒を調製し、(iv)両者が協奏的に作用して多段階の素反応を効率的に進行させることを、中心にして進めた点が萌芽研究として成功を得られた理由と考えている。
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