研究課題/領域番号 |
16K14482
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
吉田 朋子 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 教授 (90283415)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズマ照射 / 光触媒 / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
直線型ダイバータプラズマ模擬試験装置NAGDIS-Ⅱを用いて,板状タングステンにHeプラズマ(Heイオン)を照射し,照射後の材料を主にSEM, TEMを用いて観察した.プラズマ照射エネルギーや照射時間(照射量),材料表面温度の3つのパラメータを変化させながらタングステン表面に形成されるナノ構造を調べた結果,樹枝状ナノタングステン構造は,Heプラズマ照射エネルギーが80 eV 程度(50~130 eV),タングステン表面温度1300K以上,照射量1025/m2以上で形成することが分かった.一方,照射条件を変えるとタングステン表面に数ナノメートルの穴が開いたホール構造も生成することも明らかとなった. 一方,Heプラズマの照射時間(照射量)によって,生成する樹枝状タングステンのサイズ(幅・長さ)がどのように変化するかを詳細に調べた.この構造変化は,光反射・吸収率の変化として敏感に現れると考え,Heプラズマ照射中に外部からレーザー光を導入し,タングステン材料の反射・吸収率変化をその場観測したり,照射後試料の拡散反射スペクトルを測定した.Heプラズマの照射と共に,紫外から近赤外領域における光反射率が単調に減少し,1025/m2以上照射すると,試料表面に長さ数マイクロメートル,幅数十ナノメートルの樹枝状構造が生成することが分かった.これら一連の実験により,樹枝状ナノタングステン生成過程を追跡・理解し,材料表面改質のための指針を得ることができた.一方,同様の実験をチタンに対しても行い,チタン表面にも樹枝状ナノ構造を生成させることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に関しては,当初計画を立てた通りに順調に進展していると言える. プラズマ照射によるタングステン樹枝状構造の形成については,Heプラズマ照射中に外部からレーザー光を導入し,タングステン材料の反射・吸収率変化をその場観測したことにより,照射後の試料観察をするまでに,樹枝状構造の形成有無について大まかに判断できたところが功を奏したと思われる.また,研究計画に即して,研究準備や環境を順調に整えているため,現在のところ計画通りに遂行できたと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究において得られた知見を基に,板状タングステンにHeプラズマを照射し,試料表面に樹枝状ナノ構造を形成させる.照射後の試料について表面酸化処理を行うことによってナノ構造WO3とWとの界面を有するWO3/W試料を作製する.この際の表面酸化処理は大気中で保持することによる処理,加熱酸化処理,酸化・還元剤を用いた処理など各種行い,WO3とWの割合を様々に変えた試料を作製する. 作製した試料を用いて紫外~近赤外光照射下で水分解による水素生成反応や有機物分解反応を行う.各触媒の分解活性を比較し,触媒表面の局所構造や酸化処理条件が光触媒活性に及ぼす影響について明らかにする.特に有機物分解反応については色素などの分解反応を計画しており,色素分子の試料表面への吸着と実際の分解とを区別することが重要となる.そのため,反応中の有機物分解プロセスをXAFS測定によって追跡し,反応メカニズムも解明することによって光触媒的に分解反応が進行していることを確認する.
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