研究課題/領域番号 |
16K14485
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関 実 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (80206622)
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研究分担者 |
山田 真澄 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30546784)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞培養 / マイクロ流路 / ハイドロゲル / 癌細胞 / 抗ガン剤 / 癌浸潤 |
研究実績の概要 |
初年度である平成28年度は,主にハイドロゲル作製のためのマイクロ流路の設計と作製を行い,実際のハイドロゲル中における癌細胞の浸潤挙動の評価を行った。ハイドロゲルの材料としては主にアルギン酸を利用した。階層的ファイバー状ハイドロゲルの作製においては,マイクロノズルアレイ構造を通して,組成の異なるアルギン酸Na水溶液を導入し,ノズルのパターンに応じた複合的な断面パターンを有するゲル材料の作製方法を応用した。中央(コア)に肺癌細胞,シェルに正常細胞として線維芽細胞を導入したところ,シェル部に形成した軟部を通じて,癌細胞が一定期間の培養後に外部へと浸潤することが確認でき,癌細胞の浸潤度合を,「浸潤した(外部に到達した)細胞の数」によって簡便に定量できることが明らかとなった。さらに抗癌剤を投与した場合の細胞の浸潤度合が変化することや,癌細胞の発現する遺伝子にも差異が生じることが確認された。 また階層的シート状ハイドロゲルの作製においては,3層構造をとり,入口から導入された溶液が交互に分配され合流する流路構造を作製した。平面的なノズルの出口から,デバイス外部におけるゲル化剤水溶液中に押し出すことによって,ストライプ状となった中層の内部に一定間隔で癌細胞(メラノーマ)を包埋し,上下層に正常細胞を含んだハイドロゲルシートを形成することができた。得られたシートをコラーゲンゲルの上に静置したところ,細胞の浸潤が実際にゲル方向に誘導される様子が観察され,本手法の有用性を実証することができた。なお,これらの検討において,細胞接着性のペプチドを結合させたアルギン酸からなるハイドロゲルを用い,それによって癌細胞の浸潤が促進することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
階層的なハイドロゲル材料として,当初の予定通り,ファイバーおよびシートの2種類を作製し,それぞれ癌細胞の3次元的空間における浸潤挙動を制御することに成功した。このことによって,癌細胞の浸潤を簡便かつ正確に定量評価するための新規手法としての有用性を実証することができた。さらに,抗癌剤を投与したところ,癌細胞単独の場合と共培養を行った場合で,細胞機能に差異が生じることが明らかとなった。以上の結果は,ほぼ当初の想定通りの進捗であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,特に階層的なシート状ハイドロゲル材料を用いた癌細胞の浸潤挙動評価系について,シート形成の再現性,細胞挙動の再現性,および細胞機能の変化について,より詳細な評価を行う予定である。特に,共培養によって癌細胞の浸潤がより増加するかどうかについて検証を行う。さらに,癌細胞の転移モデルの構築を目指した応用展開として,微小な流路構造を内包するハイドロゲルを用いた実験系の構築についてもチャレンジしたいと考えている。
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