研究課題/領域番号 |
16K14487
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 剛 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20345333)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オイルボディー / 珪藻 / ディスプレイ |
研究実績の概要 |
本研究ではオイルボディ局在タンパク質が同定されているオイル高蓄積珪藻Fistulifera属を有用物質の生産ホストとして用いる。当該株のオイルを蓄積するオルガネラであるオイルボディを有機反応場としてとらえ、疎水性の高い化合物の新たな生合成プロセスの開発を目指す。平成28年度では特に、オイルボディ局在アンカータンパク質の解析及び融合タンパク質の局在の確認に向けて、オイルボディ局在アンカータンパク質の発現量制御に注力した。オイルボディ局在アンカータンパク質の解析及び融合タンパク質の局在の確認には、オイルボディ局在タンパク質にGFPを融合したタンパク質の安定的な発現が必須である。タンパク質の過剰発現は細胞毒性を誘発し得るため、発現プロモーターの選定が重要となる。本研究では、オイルボディ局在タンパク質にGFP融合したタンパク質の発現に際し、複数種類のプロモーターを検討した。その結果、これまでにGFP蛍光の観察ができていなかった融合タンパク質のGFP蛍光の確認に成功し、以前と比較して安定的な融合タンパク質の発現を実現するプロモーターを選定することができた。オイルボディ局在タンパク質にGFP融合したタンパク質の局在観察に成功した例は本研究を含めて数例のみであることから、大きな研究成果の一つであると考える。また、珪藻Fistulifera属のオイルボディと相互作用するタンパク質を新たに複数種類同定した。これらのタンパク質は新規アンカータンパク質の候補となる他、オイルボディの形成機構の解析に貢献するものである。本研究で初めて同定したオイルボディの形成に関与するタンパク質は、将来的に本研究の開発する新たな有用物質生産プロセスにおいて生産性の向上に寄与すること期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度までに、オイルボディ局在タンパク質にGFP融合したタンパク質の発現により適したプロモーターの選定を行った。また、オイルボディと相互作用するタンパク質を新たに複数同定した。これらの成果により、来年度に予定されている、オイルボディディスプレイの実証実験を滞りなく開始することが可能となった。以上の事より、本研究はおおむね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度中に選定したプロモーターを利用して作出したタグ融合タンパク質発現株を用いて、アンカータンパク質の配向性を確認することを目指す。具体的には、形質転換体からオイルボディを分画し、プロテアーゼで処理した後、オイルボディの免疫電子顕微鏡観察や、タグの局在を指標にアンカータンパク質の配向性を確認する方法を検討する。更にアンカータンパク質に対して、各種酵素(リパーゼ、チオエステラーゼ、不飽和化酵素、脂肪酸鎖伸長酵素)をモデルタンパク質として融合させ、実際にオイルボディ内での酵素反応が可能であるか検証する。また、各種酵素を融合させたタンパク質の毒性を考慮し、平成28年度中に選定したプロモーターの他に新規プロモーターの探索を平行して行う。融合タンパク質が細胞毒性を誘発し、平成28年度中に選定したプロモーターで発現できない場合、新規プロモーターを用いて融合タンパク質を発現させる。
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