研究実績の概要 |
環境負荷低減化の観点から、国内外でポリマーの再資源化やモノマーのバイオ生産が重要視されている。ナイロンオリゴマー分解菌Arthrobacter sp. KI72株は3種類のナイロンオリゴマー分解酵素NylA/NylB/NylCにより、6-アミノヘキサン酸(Ahx)オリゴマーをモノマーのAhxまで分解する。最近、ⅰ)Ahxはアミノトランスフェラーゼ(NylD)によりアジピン酸セミアルデヒドに変換され、その後、デヒドロゲナーゼ(NylE)によりアジピン酸へと代謝されること、ⅱ)NylDについては2種、NylEについては20種の類似遺伝子が認められること、ⅲ)NylD1,NylE1を共役させた反応系により、Ahxは約90%の変換率でアジピン酸へ変換されることを明らかにした。本年度は、NylD1、NylD2の触媒機能の比較、類縁酵素の立体構造を基盤とした基質結合部位の推定と活性との関連性について検討した。nylD1,nylD2遺伝子を、各々、大腸菌で高発現させ、His-Tag精製標品について酵素活性を測定した。その結果、NylD1に比べてNylD2は、Ahxでは約18倍、GABA では約2.6倍高い活性が確認できた。また、アミノ基受容体をピルビン酸等に変更した時の活性変化についても検討した。Arthrobacter auresceus TC1株の4アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼ(Ara-GABT)は立体構造が解明されており、NylD1, NylD2に対して、各々95%、49%のアミノ酸配列相同性を示す。活性中心近傍の構造比較を行ったところ、PLP結合部位(Lys295)周辺のアミノ酸残基が保存されていることが明らかとなった。
|