今後の研究の推進方策 |
NRPSのアデニル化ドメイン(Aドメイン)の中でもペプチド性抗生物質であるチロシジンの合成酵素由来のAドメイン(TycA-A)は、本来の基質であるL-Pheのほかに、5種類のアミノ酸(L-Trp、L-Tyr、L-Met、L-Leu、L-Val)を基質として認識し、さらに興味深いことにそれらアミノ酸のD-アミノ酸も同様に基質とすることを見出した。本アミド結合形成反応の特長を活かすと、L,L-型ジペプチドに加え、L,D-型、D,L-型、D,D-型のジペプチドの合成が可能になる。とくにD,D-型ジペプチドは、自然界に多いL,L-型ジペプチドの機能比較対照として大きな需要が見込まれ、キラリティ混合型ジペプチドの効率的な合成法の開発はこれまでに報告例は無い。そこで、TycA-A以外にD-アミノ酸をアデニル化するAドメインの探索を推進し、主に任意のD,D-型ジペプチドの合成法を開発する。自然界におけるキラリティ認識メカニズムの解析や、D-, L-アミノ酸の両方を認識する酵素の特性解析も検討してみたい。さらに、D-アミノ酸を含むジペプチドは分解を受けにくいと思われるので、ATP添加の必要のない菌体反応系や発酵法による生産の可能性を探る。
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