研究課題/領域番号 |
16K14497
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
福田 展雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (00613548)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酵母 / 細胞融合 / 遺伝子回路 |
研究実績の概要 |
合成生物学では、電子回路の集積手法をヒントとして、遺伝子パーツにより構成される遺伝子回路を組み上げ、それらを複合化することにより、高度な生命機能を創出することを目指している。しかし合理的(情報工学的)な遺伝子回路の設計は不完全であるため、構築した細胞の表現型を確認して不十分であれば、問題点を明確化したうえで設計に戻って反映する必要がある。この試行錯誤のサイクルは現状では非常に緩慢であり、とくに細胞の構築プロセスには多くの時間・費用・労力を要する。そこで、ある機能単位を有する酵母細胞を細胞融合(接合)させ、各酵母が有する遺伝子パーツを段階的に統合する技術基盤を確立することで、遺伝子回路構築の効率化を図る。 平成28年度は、遺伝子パーツを搭載した一倍体(α型)酵母株を創製した。緑色または赤色蛍光タンパク質を発現する酵母株に加え、人工転写因子を発現する酵母株を取り揃え、各酵母が想定した蛍光特性を示すことを確認した。遺伝子パーツを搭載した一倍体酵母株の接合型は全てα型であり、この状態では接合によるパーツの統合を行うことができない。そこで酵母の接合型をα型からa型へと変換するためのプラスミドDNAを構築した。当該プラスミドDNAを創製したα型酵母に導入し、培養と単離を経たのちそれぞれa型の酵母株を取得した。さらに、誘導剤の存在下で赤色蛍光タンパク質を発現するa型酵母と、恒常的に緑色蛍光タンパク質を発現するα型酵母を接合させ、両形質を有するa/α型の二倍体酵母株を創製した。以上のように、酵母の接合型改変と細胞融合を組み合わせて、遺伝子パーツを段階的に統合する技術基盤を確立することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は、計画書に記載した通り、遺伝子パーツの発現カセットの設計および構築し、相同組換えにより酵母の染色体DNAへと挿入することに成功した。創製した酵母株は各培養条件下で、想定通りの蛍光特性を示すことが確認された。また酵母の接合型を変換するためのプラスミドDNAを構築することに加え、平成29年度の計画に記載している酵母の接合型変換および接合による遺伝子パーツの統合工程の一部を前倒しで達成している。以上の結果より、当初の計画以上に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(平成29年度)は、前年度に創製した酵母株の統合を進め、遺伝子回路を完成させる。緑色および赤色蛍光タンパク質を発現する酵母株に対して、さらに人工転写因子を導入していくことで、想定した蛍光特性が現れるか確認する。想定した特性が確認できない場合は遺伝子パーツの交換を行う。上述の動作確認の完了をもって、複合遺伝子回路の構築工法の完成とし、成果の公表と技術移転の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は研究補助員の雇用(6人月)を想定していたが、適任者が見つからず雇用が叶わなかったため。なお当該年度は研究開発が順調に進んだため、研究代表者のみで計画を遂行することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の研究補助員の雇用(12人月)における人件費として使用する。前年度に技術基盤を確立することができ、酵母株の構築手順が定まった。今後は作業従事者を増員することで、研究計画の進行を加速することが期待できる。
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