研究課題/領域番号 |
16K14501
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
上野 誠也 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60203460)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 航空交通管理 / 誘導航法制御 / 最適制御 / ホモトピー法 |
研究実績の概要 |
本研究は、空港周辺の航空交通管理の大幅な改革の一部となる飛行順序と経路の同時最適化に寄与することを目的として実施した。空間座標と時間を同一視する時空間座標系に新たな座標軸を導入し、ホモトピー法(連続変形法)を用いることで、順序の最適化を同時に行うアルゴリズムの開発を試みている。平成28年度の研究計画は大きく二項目あり、1)アルゴリズムの安定性の検討、2)実データを用いた有効性の提示である。これらの検討の前提となる課題として、0)ホモトピー法を用いた飛行順序と軌道の同時最適化がある。平成28年度は2機が干渉する例を対象に上記の三課題に取り組んだ。 0)ホモトピー法を用いた飛行順序と軌道の同時最適化:2機が干渉する経路に対して、衝突する経路を初期仮定解とし連続的に解を変化させることで飛行順序と飛行経路の同時の最適化のアルゴリズムを開発し、数値計算例を得ることができた。本研究課題の基礎となる理論の妥当性が示されたことは前提条件を確立した大きな成果である。さらに、この手法を複数機の編隊形成に応用できる点も確認できた。この課題は、平成29年度に予定した課題であるので、前倒しで実施したことになる。 1)アルゴリズムの安定性の検討:本課題を実施するにあたり、大きな問題が生じた。2機を例とした提案手法は安定的に解が得られる傾向があり、研究課題の提案時に懸念されていた不安定性が生じなかった。そのために、2機を対象とした解の安定性に関する研究成果は明確に得られていない状態である。明確な成果が得られていないので、国内会議での発表は見送った。 2)実データを用いた有効性の提示:前項の研究課題への取組みが遅れたために、本研究課題は未着手となった。しかし、0)の成果が得られていることと1)において安定性が高いことが示されたことにより、本研究課題を実施するにあたり、大きな障害が存在しないと判断している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要のところで述べたように、提案アルゴリズムの妥当性を含めると、平成28年度は三つの研究課題に取り組む計画であった。進んでいる研究課題もあるが、遅れている研究課題があるので、やや遅れていると判断した。 0)ホモトピー法を用いた飛行順序と軌道の同時最適化:十分な成果が得られているだけでなく、平成29年度に予定した複数機への応用課題に対する解を得ることができた。当研究課題に対しては、予定以上の成果が得られたと判断できる。 1)アルゴリズムの安定性の検討:2機を対象とした条件では不安定な解が得られなかった。このことは2機が干渉する条件では提案するアルゴリズムの安定性が確保できているとも判断できる。従って、計画した目標は達成している。 2)実データを用いた有効性の提示:未着手であるので、遅れていると判断できる研究課題である。しかし、上記の成果が得られたことにより、計算上の課題は生じないと判断できる。遅れているが平成29年度の複数機の例で平成28年度に予定していた成果が得られると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
主となる研究課題である1)アルゴリズムの安定性の検討ならびに2)実データを用いた有効性の提示において、研究計画からの遅れが生じているが、技術的課題があるための遅れではないので、特に大幅な研究計画の変更は必要ないと判断している。一方、既に複数機への応用に着手しており、研究成果の見通しを得ていることは、他の研究内容に良い影響を与えている。作業内容の遅れが一部にみられるが、現状において、大幅な研究計画の変更は必要ないと判断している。なお、平成28年度に発表を見送った国内会議での研究成果の発表は平成29年度に行う予定である。国際会議では2)の成果を発表する予定であるが、国内会議では1)の成果を発表するので、両者の発表内容は異なる方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の予算計画と実績の差異の大きな点は、国内会議での発表を見送ったことである。前述のように、計算アルゴリズムの安定性に関する成果を発表する計画であったが、2機を対象とした計算例では不安定な解が得られなかった。そのために安定性を向上させる効果が認められず、学会発表レベルの成果が明確でなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は複数機に対する検討を行う計画である。この研究課題のレベルでは、解の不安定性が発生する可能性が高く、安定性向上の成果が明確に表れると推察できる。従って、平成29年度の学会発表計画を申請時より増すことにより、平成28年度の未使用分の使用計画を立てる。11月松江で開催される飛行機シンポジウムを想定している。なお、国際会議(韓国開催)は予定通りに行い、実データでの成果を発表する予定である。
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