本年度は前年度用いた深紫外LEDよりより短波長であり帯電量の増加が期待できる重水素ランプを用いて帯電実験を行った.実験には直径50 umの炭素粒子を用い,付着力による塊化を防ぐために超音波篩を用いた粉体フィーダを新たに開発した.供給量は3.2 mg/sであり,印加した電極板間中央(間隔20 mm)にむけて自由落下させ,電極間で電場により受ける力を粒子の移動距離から逆算し,帯電量を見積もった.その結果,印加電圧1.0 kV,1.5 kVに対し平均帯電量は6.0-7.0×10-19 C,最大帯電量は3.6×10-18 C(全体の0.66%)であった.これは理論的な帯電量である4.0×10-15 Cに比べ2桁以上低い値である.この原因として静電気と再結合の効果が考えられる.光電離により粒子は正に帯電するはずであるが,実験では正電極板に一部の粒子が付着した.これは供給時の摩擦により静電気が発生し,負に帯電した粒子が電場により移動した.実際,深紫外光を照射せず電場を印加した場合,粒子は全体的に正電極側に移動している.従って,静電気による帯電の分,光電離の効果が低下していると考えられる.次に再結合に関して,粒子が深紫外光を通過する際,初期配置や電場による移動のため他の粒子に光が遮られ再結合する時間帯が存在すると考えられる.その結果,実効的な加速時間が減少し帯電量が過小見積もりされると考えられる.以上の結果から摩擦による帯電を防ぎかつ高効率に光を照射するためには粒子をテープなどによりシート状に供給する装置が有効であると考えられる.
|