最終年度は、マイクロスケールのカーボンファイバーからなる多孔質体にレーザーの光エネルギーを吸収させ、多孔質体を3000K程度までの温度に加熱し、その内部を流れる気体の熱エネルギーに変換する機構に関して、前年度までに行った予備実験を踏まえ、メカニズムを解明するためのより詳細な実験と、理論解析を行った.その成果として、また、簡易的な一次元モデルを構築し、実験データと整合することを確認し、光エネルギーから流体の熱エネルギーへのエネルギー変換過程の物理について、定性的な理解ができたと考えている。その結果として、本メカニズムによる熱流体推進は、多孔質体内部に高速なガスを流し、レイノルズ数を高めることによって、高い効率を得られる可能性が示唆された。さらに、新しい実験系を構築することで、輻射スペクトルの分布、ならびに、多孔質体の温度分布を可視化することに成功し、三次元的な多孔質体内部の輻射熱流動を把握することに成功した。これにより、多孔質内部の流動状態ならびに温度分布を制御することで、高いエネルギー変換効率を得られることが示唆された。 これらの成果は、その途中経過の段階で、既に学術雑誌に1本論文が掲載されているが、さらにもう1本の論文において成果を発表する予定である。 本研究は、マイクロスケールの多孔質体を用いた熱流体推進に関する研究としては初めてのものであり、現在実用に供されている宇宙用熱交換型推進に対しても、新たな設計指針を与えうるものであり、宇宙推進工学に大きな意義のある研究である。
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