研究課題/領域番号 |
16K14506
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 直嗣 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (40380711)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | レイリー散乱 / ホールスラスタ / プルーム / 中性粒子密度 / 非接触計測 |
研究実績の概要 |
電気推進器を地上で試験する際に、試験設備内に残留する中性粒子が電気推進器の性能に影響を及ぼすが、これの定量的な評価は行えていない。これは、電気推進器の作動中に中性粒子密度を正確に測定できる計測システムがないためである。そこで、非接触の光学測定法のひとつであるレーザーレイリー散乱法を用いて、中性粒子密度が計測できるシステムを構築する。計測システムの妥当性を示した後、電気推進器のひとつであるホールスラスタを作動させた状態で中性粒子密度分布を計測し、ホールスラスタの性能との定量的な関係を明らかにし、真空設備の基準策定のための基礎データを取得する事が最終目的である。 そこで、内野らの先行研究において、10^-2 torrレベルに成功しているが、これよりも検出感度を向上させるために、レーザーのパルス幅を短くして、計測するシステムに取り組んだ。はじめに、パルス幅短縮のために、誘導ブリルアン散乱を利用したパルス圧縮器の作成を検討した。しかしながら、本研究所有のレーザーのパルスの線幅は広く、パルス圧縮することが困難であることがわかり、可能な限りパルス幅を短くしてSN比向上が可能であるかの検討を行った。その結果、パルス幅を8 nsから3 nsに変更したところ、SN比は1.5倍に向上することを確認した。さらに、ホールスラスタを用いた実験を行い、10^19 m^-3の低密度の中性粒子密度の計測に成功した。これは10^-4 torrレベルであり、当初の目標を達成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SN比向上のためには、迷光の抑制とプローブレーザーのパルス幅の短縮が貢献するとして、システムを構築した。レーザー光路やビミューイングダンパーの最適化やプローブレーザーのパルス幅の効果を検証したところ、当初目標としていた10^-4 torrレベルの中性粒子密度の計測に成功した。このように、当初のほぼ計画どおりの感度を得ることに成功しており、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの成果より、更なる向上には更なるパルス幅の短縮が不可欠である。また、レーリー散乱の断面積は波長の4乗に反比例することから、感度向上のためにはレーザーの短波長化が効果的である。そこで、現在使っている532 nm から355 nmへ波長を変更して、さらにサブナノ秒のレーザーを用いて、SN比の更なる向上が見込めるかどうかの検証を行う。SN比が改善した後、実際のスラスタ作動環境下での実験を行い、本計測システムの優位性を示す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では既存のレーザーの回収でパルス幅の圧縮を試みていたが、不可能であるとわかり、代替案の実行には本年度の予算だけでは足りず、次年度に行うため。
|
次年度使用額の使用計画 |
他研究室から借用するピコ秒レーザーを改修して、パルス幅を1 ns以下にして、SN比が向上するかどうかを検証する。
|