高度な熱歪設計を達成するためには,高精度な「線膨張係数」と「熱伝導率」とその温度依存性情報に基づくナノメートルオーダーの熱的寸法安定性評価が不可欠となる。しかし,これまで材料自身の熱的寸法安定性を広い温度範囲で総合的に評価する手法は無く,線膨張係数と熱伝導率は個別に求められてきた。そこで本研究は,光ヘテロダイン干渉法と周期加熱法を融合した全く新しい手法により,ナノメートルオーダーの熱的寸法安定性を総合的に評価できる技術を確立し,宇宙観測機器や精密光学素子などの熱歪解析・設計・制御の高度化,技術革新をもたらすことを研究目的とする。 平成28年度は線膨張係数と熱拡散率,比熱同時測定構築,実現性の確認を中心に行った。大気雰囲気で室温用の光ヘテロダイン干渉計を構築し,新たに周期加熱理論を導入し,熱拡散率の測定ができるシステムを構築した。また,線膨張係数と熱伝導率を同時に測定できるように,光干渉用の光路と周期加熱用光路を設けた平行バネ式試料ホルダーを考案,設計,製作を行った。次に,標準材料として単結晶シリコンを選定し,室温付近,大気環境下で線膨張係数と熱拡散率の予備的測定を行い,その有効性を確認した。 平成29年度は真空加熱冷却システム導入,健全性評価・最適化への検討を中心に行った。高真空で広い温度での実験が可能なように真空排気システムを新たに導入した。また液体窒素導入可能な試料ホルダー構成に改良した。単結晶シリコンを標準試料として,線膨張係数,熱伝導率の温度依存性測定評価を行い,装置健全性を確認した。次に,次期天文衛星の望遠鏡候補材料として検討されているスーパーインバー,SiC,ピッチ系CFRP,ゼロテュア等の低熱歪材料を対象とし,熱的寸法安定性を測定し,高い精度での測定可能性を示した。
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