研究課題/領域番号 |
16K14515
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
有馬 正和 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70264801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 密度差エンジン水中グライダー / 浮力調整装置 / 姿勢制御機構 / 自律型海中ロボット / 密度成層 / Nereus |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、一切の動力を用いず、海中の密度躍層がもつ物理的性質を利用した「密度差エンジン」を提案し、これまでにない新しい水中グライダーの実現可能性を明らかにすることである。海洋の自然エネルギーを最大限に活用する、密度差エンジンによる自律型水中グライダーを実現することができれば、海洋における豊かな生態系を育む躍層付近の調査を効率的に行うことが可能となる。本研究では、バッテリーなどの動力源を用いずに推進することのできる試験機体を設計・製作し、水槽試験によってそのグライディング性能を解析して、「密度差エンジン」の有効性・妥当性を評価する。 今年度は、密度差エンジン水中グライダーの試作機を新たに設計、製作して大型アクリル水槽(長さ2.2m×幅0.5m×深さ1.0m)において潜航試験を行った。Nereus(ネレウス)と名付けられた機体は、全長550mm、全幅341mm、全高170mm、胴体直径85mm、重量1.995kgで、機首形状はNACA0040翼型である。浮力調整装置には、ゴム製ベローズを導入し、機体後部に配置することによって、潜入に従って浮力を失うとともに浮心位置を前方に移動する役割を果たす。大型アクリル水槽には上部1/3に真水(0.0%食塩水)、中部1/3に1.0%食塩水、下部1/3に2.0%食塩水を入れ、機体の比重を1.01としている。ベローズを用いた浮力調整と浮心移動機構を実現したことによって、水槽上部では機首下げで潜入を始め、水槽下部に到達すると機首上げで浮上を始める。やがて水槽中央で停止してしまうものの、動力源を必要とせずに、潜入と浮上を行わせることができた。また、最終年度の研究計画に従って、実海域で長期間・広範囲に亘って海洋の環境や生態系を調査することのできる自律型海中ロボットの概念設計および運用方法の検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究費補助金の申請時の計画に従って、密度差エンジン水中グライダー実験機を試作して水槽試験を実施し、挙動を解析・評価することができた。また、最終年度は、実海域で使用することのできる水中グライダーを想定して、エネルギー消費率の評価を行うための概念設計を進めることができたので、当初計画通りに順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、密度差エンジン水中グライダーの試作機を用いて大型アクリル水槽(長さ2.2m×幅0.5m×深さ1.0m)で潜航試験を行うことができたので、複数回の潜入・浮上を実現できるような小型の密度差エンジン水中グライダーを設計・製作して大型アクリル水槽にて実験を行うとともに、実海域水中グライダーSOARERを想定して、実海域における密度躍層データを用いてエネルギー消費率の評価を行いたい。
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