研究課題/領域番号 |
16K14517
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
吉田 弘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 部長 (00359134)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 海水 / 低周波 / 複素誘電率 / コンデンサ型 / テストフィクスチャ |
研究実績の概要 |
海中で複素誘電率を計測するための,現場型テストフィクスチャの設計をおこない,コンデンサ型テストフィクスチャを製作した。また,昨年度購入したLCRメータを海中で利用できるような容器を設計・製作した。当初計画では,テストフィクスチャは海中で利用できるコンデンサ型と同軸型の2つを開発する予定であったが,計測装置の詳細検討の結果,同軸型の場合に反射係数を計測する小型ネットワークアナライザについて,海中に持ち込める現実的なサイズのモノを選定した場合,ダイナミックレンジが十分でなく,導電率が大きい海水中では誘電率部分を検出するために必要な小数点2桁以上の分解能を得ることが本研究規模の中では実現が難しいことから,現場型のテストフィクスチャに関してはコンデンサ型のみを開発した。 コンデンサ型は,フリンジング効果を低減させるためにガード電極を設けたほか,4端子法による計測ができるように補助電極を設けている。電極は海水がある程度交換できるように金属メッシュを用いた。電極は直径10cmで,電極間隔は10mmから100㎜まで変更可能となっている。計測装置からテストフィクスチャまでの電気信号は同軸ケーブルに防水型の熱収縮型チューブを被せて伝送する。計測装置とケーブルの接続には専用の水中コネクタを用いた。 海中計測装置は円筒型耐圧容器内部にLCRメータを配置し,バイアス印加装置を経由してフィクスチャに計測信号を供給する。これらの装置を気中から遠隔操作するために,光通信装置も容器内に配置した。 また,より正確なデータを得るためには,電気化学反応を考慮したほうがよいため,ポテンショスタット,ガルバノスタット計測も可能なプローブを準備した。 これらの海中計測システムについて,電子情報通信学会で報告をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は海中現場型フィクスチャの設計のみを行い,試作まで行えなかったために,当年度にフィクスチャの開発を実施した。また,予備試験により,同軸型プローブを利用した場合に計測器のダイナミックレンジが不十分であることや,電気化学ポテンシャルの影響を考慮したほうが良いことなどがわかり,当初計画からの実験系の設計変更が生じた。これらの対応のために昨年度の遅れを挽回することができず,計画よりもやや遅れた状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年延長し,当初計画の2種類のうち現場型コンデンサフィクスチャを用いた海水の複素誘電率計測系を用いて,海中の複素誘電率の計測を進める。その際に,海水の電気化学反応の影響も評価する。まずは標準系を用意し,既知の複素誘電率を評価することにより,計測系のチューニングを十分に行い,その後,試験水槽での評価を行う。ここまでは計測器は陸上にある。 製作した現場型計測装置に事前チューニングの済んだフィクスチャを接続し,実海水中の複素誘電率計測を行う。本計測は複数の海域で周波数を掃引して実施する。また,フィクスチャを海底の泥に挿入することにより,海底表層泥の複素誘電率も計測する。 なお,当初計画では,他のプロジェクトに相乗りすることで,海中ロボットを用いて深海での計測を予定していたが,平成30年度中の海中ロボットの運用予定が無いため,試験は浅海域に限定して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れの影響と,問題点への対応のために,研究がゴールに到達せず,実験に資する費用に未使用額が生じた。 平成30年度は,製作した複素誘電率計測システムを使用して,装置の較正方法の確立と水槽における装置のチューニング,複数の実海水中での複素誘電率計測を実施する。
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