海底下の音響資源探査に用いられるエアガンによる海中騒音が問題となっているなか、海の資源探査で今後の活用が見込まれる狭帯域低周波音源の校正実験をアイスランドで実施した。バイブロサイスとよばれる狭帯域低周波音源は、探査に有効な100Hz以下の低周波成分のみを放射するため、エアガンが発する不要な高周波成分を含まず、海洋生物への影響が軽減できると期待されている。 開発した校正手法を用いて受信音場の垂直分布を計測したところ、理論計算値と合致する結果を得た。垂直アレイを構成し、同一音源同一水平距離でも深度によって受信音圧が変動する様子を確認した。主に直達波と水面反射の干渉により、位相のずれから干渉パターンが生じる効果が変動の原因であった。これは本研究で過年度に湖で計測した現象であるが、広く深い海域においても実験的に再現された。低周波音源からの音響伝搬の正確な実測は、今後の海中音影響評価にも役立てられると考えられる。 社会実装をすすめるため、海洋音響学会で「海中騒音の評価手法研究部会」を立ち上げ、海中音の実際的な計測を行うためのガイドライン作成を国内の研究者を集めてすすめた。また同学会でシンポジウム「海洋サウンドスケープの計測と応用」を開催した。本課題推進において得られた知見が活かされ、環境アセスメントにおける実際的な音響計測手法について、部会の主宰者として議論のとりまとめを行った。 最終年度は再生エネルギー新法により洋上風力発電の建設計画が加速した年であった。洋上風力発電所は低周波の音波を放射するため、この計測が重要な課題となっている。本課題の成果をうけ、生物観測技術やその解析方法について多くの助言を行った。
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