研究課題/領域番号 |
16K14519
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
晴山 渉 岩手大学, 理工学部, 助教 (00451493)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地層汚染修復 / 地下水・土壌汚染 / 環境浄化 / 促進酸化 / 廃棄物有効利用 |
研究実績の概要 |
有機塩素化合物による地下水・土壌汚染の浄化には、促進酸化法がよく用いられているが、促進酸化法は、クロロメタン類に対しては反応速度が小さいことが知られている。酒石酸鉄錯体の光反応を利用した促進酸化法において、酒石酸の供給源としてワイン残渣やヤマブドウ果汁残渣を用いることで、酒石酸試薬を用いた場合には見られない四塩化炭素の分解を促進する傾向が見られた。本研究では、その分解メカニズム解明と汚染物質処理への実用化を検討した。 平成28年度の研究においては、まずワイン残渣を用いて鉄錯体によるクロロメタン類の光分解実験を行った。その結果、四塩化炭素についてはワイン残渣の添加によって分解が促進される傾向が見られたが、クロロホルム、ジクロロメタンについてはワイン残渣の添加が、光分解を阻害する傾向があることが分かった。次に、ワイン残渣とヤマブドウ果汁残渣から水中に溶出する物質の組成を明らかにした。これらの測定値を基にして溶出する物質を、実験用試薬により模擬ワイン残渣溶出液を作成し、様々な条件下でクロロメタン類の分解実験を行った。その結果、四塩化炭素の光分解において分解速度を増加させるために必要な要素は、酒石酸濃度であることが分かった。また、クロロホルムとジクロロメタンの分解については、ワイン残渣溶出液中に含まれる硫酸イオンが光分解反応を阻害することが分かった。以上の結果から、促進酸化法では、最も分解速度が小さいと言われる四塩化炭素をワイン残渣の供給によって分解速度増加できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に実施する研究計画としては、ワイン残渣・ヤマブドウ残渣の組成分析・水溶性物質の組成分析、ワイン残渣・ヤマブドウ残渣を用いたクロロメタン類の光分解、分解条件の検討、模擬残渣溶出液を用いたクロロメタン類の分解実験の実施を計画していた。これの研究内容は全て、計画どおり実施された。 また、これらの検討を実施したことにより、ワイン残渣による四塩化炭素の光分解の促進する因子は酒石酸濃度であることがわかり、この促進効果はクロロホルム、ジクロロメタンには、適用できないことが分かっている。この反応メカニズムについて今後検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究計画としては、当初の計画どおり以下の内容を検討する。 1)二酸化炭素濃度,塩化物イオン濃度,有機酸濃度等を測定することによって,クロロメタン類分解後の分解生成物を明らかにする。2)クロロメタン類分解の化学反応式およびクロロメタン分解に影響を与える因子の反応メカニズムを推定する。3)推定した化学反応式・メカニズムを基に,その検証に必要な実験を行う。また,必要に応じて,速度論的な検討を実施する。4)クロロメタン類の分解の促進条件が,光分解以外の促進酸化法(フェントン法,過流酸法も同様のメカニズムにより,クロロメタン類の分解促進が生じるか検討を行う。5)実際の地下水を用い,上記のメカニズムにより,クロロメタン類の分解促進が可能か検証し,実用性の評価を行う。 さらに、平成28年の研究において、クロロメタン類でも物質によりワイン残渣の効果が異なったことから、クロロメタン類以外の汚染物質(クロロエタン類等)も分解速度に差が生じるか検討する予定である。
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