有機塩素化合物による地下水・土壌汚染の浄化には、促進酸化法がよく用いられている。しかし、促進酸化法は、クロロメタン類に対する反応速度が小さいことが知られており、特に四塩化炭素は分解速度が小さい。酒石酸鉄錯体の光反応を利用したクロロメタン類の分解おいて、酒石酸の供給源としてワイン残渣やヤマブドウ果汁残渣を用いることで、酒石酸試薬を用いた場合には分解速度が遅い四塩化炭素を分解促進できる傾向が見られた。本研究では、その分解メカニズム解明と汚染物質処理への実用性について検討を行った。 平成28年度の研究においては、四塩化炭素の光分解が促進される条件として酒石酸濃度が反応に大きく影響であることが分かっている。また、他のクロロメタン類については、残渣を用いた場合、残渣中から溶出する硫酸イオンの影響で、分解阻害がおこる傾向が見られた。 そこで、平成29年度は、酒石酸による四塩化炭素の光分解促進の反応メカニズムについてさらに検討を行った。その結果、四塩化炭素を光分解する間に、酒石酸濃度を長時間維持することが、四塩化炭素の分解促進に大きく関与することが分かった。つまり、残渣を用いた場合は、水に溶解しただけでは溶出しない酒石酸が、四塩化炭素の光分解とともに徐々に溶出し、反応中の酒石酸濃度を維持できる。そのため、残渣を酒石酸の供給源として用いた方が四塩化炭素の分解が促進できると考えられる。四塩化炭素の分解促進が生じた理由としては、酒石酸鉄錯体による光反応により生成するラジカル種が、ヒドロキシルラジカルだけでは無く、他のラジカル種も生成することが促進反応に大きく関与することが示唆された。 また光分解後の四塩化炭素中の塩素は、全て水中で塩化物イオンの形態で存在することが確認され、分解後に他の有機塩素化合物は存在していないことが分かったため、四塩化炭素の効率的な分解法となる可能性がある。
|