研究課題/領域番号 |
16K14521
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
羽柴 公博 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60456142)
|
研究分担者 |
福井 勝則 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70251361)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | トップハンマードリリング / 打撃穿孔 / さく岩機 / ボタンビット |
研究実績の概要 |
本研究では,さく岩機によるトップハンマードリリングに関する申請者の過去の研究成果を進展させ,これまでに実現していないトップハンマードリリングにおける方向制御について検討を行っている.申請者らの研究室では,過去にトップハンマードリリングのシミュレーションモデルを開発した.このモデルは簡易モデルであったので,その後,さく岩機に搭載されている油圧機器(アキュムレータ,バルブ,ダンパー)のモデルを組み込んだり,ロッド中の応力波伝播のモデルを精密化したりして,モデルの精度は実機に近いレベルまで上がってきた. 平成28年度は,このモデルをより実機に近いものとし,方向制御のシミュレーションができるようにするための検討を行った.まず,ビット先端の荷重と貫入量の関係(荷重-貫入量曲線)の精密なモデル化に取り組んだ.そのため,ボタンビットに打撃を加えて動的に岩石に貫入させる衝撃貫入試験の結果を整理し,種々の大きさのボタンビットで荷重-貫入量曲線を取得した.その際には,申請者が過去に開発した計算手法を適用することで,精密な荷重-貫入量曲線の取得に成功した.その結果をもとに,荷重-貫入量曲線を冪乗関数でモデル化し,式中の定数の関係を定式化した.これらの成果の一部を国際学会で発表した(Hashiba et al. 2016)後,より精密化したモデルを提案して論文として公表した(Hashiba et al. 2017).また,その荷重-貫入量曲線のモデルを,さく岩機本体,ピストン,ロッド,ビットのモデルと統合し,さく岩機の高精度シミュレータを構築した.このシミュレータにより,さく岩機本体の揺動,ピストンとロッドの衝突による応力波の発生,ロッドとビットでの応力波の伝播,ビットの岩石への貫入を精度よく再現することに成功し,その成果を国内学会で発表した(安ヵ川ら 2016).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において,平成28年度は(1)貫入の数値シミュレーションによるチップ配列の検討,(2)トップハンマードリリングの数値シミュレーションによる方向制御方法の検討,を実施する予定であった.このうちの(2)については,研究実績の概要で記述したように,当初の計画以上に進展した.すなわち,ビット先端の荷重と貫入量の関係を表す荷重-貫入量曲線の取得と精密なモデル化に成功し,そのモデルをさく岩機本体,ピストン,ロッド,ビットのモデルと統合することで,さく岩機の高精度シミュレータをほぼ構築することができた.(1)に関しては,従来のモデルを見直したところ,ビットの荷重-貫入量曲線と岩石の穿孔深さの関係を表すモデルを,より精密化できる可能性があることがわかった.そのため,当初計画していた,チップを非対称に配置したビットのシミュレーションを実施する前に,平成28年度はモデルの精密化に取り組んだ.その結果,(1)については,当初の計画よりもやや遅れることとなったが,モデルの精密化により,得られる成果はより大きくなると考えられる.これらを総合すると,研究全体としてはおおむね順調に進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,平成28年度に実施する予定であった,チップを非対称に配置したビットのシミュレーションを実施する.そのため,ビットの荷重-貫入量曲線と岩石の穿孔深さの関係を表すモデルの精密化を早急に実施する予定である.その後,当初の計画通り,平成28年度に構築したさく岩機の高精度シミュレータを用いて,非対称なチップ配置を持つビットの連続穿孔のシミュレーションを行う.その際に変化させる入力値としては,さく岩機の油圧,推力,ロッド回転速度などである.これらの入力値を変えた感度解析により,方向制御に最適な穿孔条件を検討する.シミュレーション結果をもとにボタンビットを試作し,ビットに打撃を加えて動的に岩石に貫入させる衝撃貫入試験を行う予定である.これらの結果を取りまとめ,トップハンマードリリングにおける方向制御の可能性を探る.
|